ウォルト・ディズニー・カンパニーの創立100周年を記念して製作された、ディズニーの長編アニメーションの最新作『ウィッシュ』。
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本作は、どんな“願い”も叶うという魔法の王国を舞台に、王国の恐ろしい秘密、国を治めるマグニフィコ王の邪悪な素顔を知ってしまった17歳の少女アーシャが、王に奪われた国民の“願い”を救うために立ち上がり、奇跡を起こしていく感動のミュージカル・アニメーション。
日本版のアーシャの声を数々のミュージカル、ドラマで活躍する生田絵梨花が担当し、マグニフィコ王の声をミュージカル作品初参加の福山雅治が担当しているのも大きな話題で、生田が唄う劇中歌「ウィッシュ〜この願い〜」も映画の公開前から注目を集め、聴いた人たちの心を熱くしています。
そこで、この日本版の裏側を探るべく、アーシャの歌に命を吹き込んだ生田絵梨花を直撃! アフレコ時のエピソードから自身の“願い”=夢までたっぷり語っていただきました。
アーシャの言葉はシンプルだけど、大切なものばかり
――『ウィッシュ』の主人公、アーシャの日本版声優に決まったときはどんな感情が最初に湧き上がりましたか?
ディズニー・アニメーションの吹替えはずっとやりたいと思っていたので、「受かりました」って言われたときは、夢が急に現実になっちゃったみたいな感じで。
受け入れる前に、フリーズした状態が一瞬ありました(笑)。身近なスタッフさんたちから「おめでとう」って言ってもらって、ようやく喜びが爆発しましたね。
――台本を最初に読んだときの感想も教えてください。
ほとんどのシーンにアーシャが出ていたので、まずそれに驚きました。
当たり前のことなんですけど(笑)。改めて“これは頑張らなきゃいけない”と思いました。
それと、言葉やメッセージはすごくシンプルなのですが、大切なものばかりで、だからこそ表現が難しいということも台本を読んだときに感じました。
自分の声とアーシャの感情をどこまでリンクさせられるか?がすごく大切で、意識的に心掛けていました。
アーシャは人間臭い多面的な女の子
――アーシャはすごく真っ直ぐで、マグニフィコ王にもちゃんと自分の意見や気持ちを言える女の子です。そんな彼女の声をどんなことを心がけて表現しましたか?
アーシャが唄う楽曲は力強いものが多いので、 “表現には強さが必要なんじゃないか”って考えていたところがあったんですでも、台本を読んだら、意外とお茶目なところもあるし、周りの人たちを引き込む優しさや熱みたいなもの持った、人間臭い多面的な女の子ということが分かって。
なので、単純に強いとか、単純に明るいとか、そういう風には決めつけずに、彼女のいろんな要素を観た人に感じとってもらえるような声の表現を意識しましたね。
――相手がマグニフィコ王でも、アーシャは間違っているときには「間違っている」とはっきり言います。生田さんはそんな彼女と似たところもありますか?
私も自分の心の声は無視できないタイプなんですけど、意外とそれを言えないときがあって(笑)。
王とあんなにしっかり対峙できるアーシャはスゴいと思いました。
――ディズニー・アニメーションのアフレコはみんなで収録するのではなく、ひとりずつ録ることで有名ですが、相手のリアクションや熱量、声量が分からないそのやり方で、気持ちを込めて声を出すのは難しくなかったですか?
一人の収録だったので難しさがありましたが、アニメーションのキャラクターの動きから感情を読み取ることはできました。
オリジナルバージョンの声優の方々からも、声は違えど、感情は伝わってくるので、最初のうちはもちろん戸惑いましたけど、やっているうちに徐々に慣れていきました。
山寺さんの声には引っ張ってもらった
――生田さんがアフレコしたときは、マグニフィコ王を担当した福山雅治さんの声も入ってなかったんですね。
そうなんですよ。(アーシャの相棒の子ヤギ=バレンティノの声を担当した)山寺宏一さんの声だけは入っていて、山寺さんの声には助けてもらったと言うか、引っ張ってもらった感覚がありますね。
――そのやり方でアフレコをして、何か“気づき”はありました?
オリジナル版の英語のセリフを聞きながら声を吹き込んでいくのですが、感情はもちろん一緒なんですけど、英語のイントネーションで日本語のセリフを言おうとすると意外と平坦な感じになるんです。
なので意識的に声の高低差やテンションをちょっと大きめにするようにしました。
劇中歌「ウィッシュ〜この願い〜」2番はすごく開放的
――本作は、生田さんが唄われた劇中歌「ウィッシュ〜この願い〜」が流れるところから物語が大きく動き出しますが、どんな想いで、どんなことを気をつけながらあの曲を唄われましたか?
この楽曲に乗ってアーシャの心情が変化し、同時に“願い”に強い力が宿っていくんですよね。
なので、曲の流れや構成はすごく考えました。1番と2番は同じメロディだけど、1番はまだ確信を持てていない、自分に言い聞かせているような感じに私には聞こえて。
その葛藤を経て、決心した後の2番はすごく開放的なんです。
心が解かれているような印象を受けたので、自分が唄うときも、曲の流れに乗ってアーシャの心情の変化をちゃんと辿っていくことを意識しました。
――アニメーションを見ながら唄った方が、気持ちも乗りやすいですか?
それはすごくありますね。ただ唄うよりも、モニターでアーシャの表情を見ながら唄った方が気持ちがグッと高まりました。
英語版の本編を見てからアフレコしたのもよかったと思います。
ストーリーが身体に入ってから唄うと、声の表現もまた違って。心情が本当に大事になってくる楽曲なんだと改めて思いました。
――ふたりの歌声が入った完成版を初めて見たときはどう思われました?
感動しました。福山さんとデュエットしているという感動ももちろんありますし、福山さんがハーモニーを寄り添って唄ってくださっているのが歌越しに伝わってきたので、そこにもとても感動しました。
大きな壁にぶち当たったときの乗り越え方とは
――アーシャは挫けそうになっても、みんなのために立ち上がる女の子ですが、生田さんは挫けそうになったときや大きな壁にぶち当たったときは、それをどうやって乗り越えられてきましたか?
私、意外と抜け出せないことも多くてで、沼ることもあるんです(笑)。
ただ、以前は動揺して“抜け出せな〜い!”って思っていたけれど、いまはなんか、“あっ、沼だ”という感じで受け入れるようになって。
「誰かいませんか〜? 助けてくださ〜い」みたいなことも言えるようになってきたし、“沼ったけど、この沼を茶色じゃなくて違う色にできないかな?”みたいな風にも考えられるようになりました(笑)。
そんな感じで、ちょっとずつ変化していけたらいいな〜と思っています。
この先叶えたい夢、絶対に諦めたくない夢
――最後の質問です。アーシャは“願い”の力を強く信じて、夢を叶えていきますが、生田さんがこの先叶えたい夢、絶対に諦めたくない夢を、壮大なものと身近なものの2パターン教えていただけますか?
小さい方から先に言うと…餃子を食べたい!(笑)。
私、意外と脂っぽいものが好きなんですけど、人と会う大事なお仕事やシチュエーションが続くときはやっぱり食べるのを控えるので、どっかで餃子を食べる時間を作りたいですね(笑)。
で、大きな夢は……大きな夢?…規模の大きな夢というのではないけれど、長くステージに立ち続けられたらいいなという願望はあります。
長く続けられている人って、人生を何周もしている感じがして。私がいま悩んだり、もがいたりしているようなことを超えてきた人たちの考え方ってすごくカッコいいなって思うし、その人たちにしか見えない視点があるような気がするんですよね。
なので、私も時間をかけて、その視点を知っていけたらいいなと思っています。
話を聞けば聞くほど、アーシャと似た方だな〜と思わせてくれた生田絵梨花。インタビューでは「なかなか言えないこともあって…」と言っていたが、言葉の端々に、どんなことにも妥協せずに真っ直ぐ突き進む強い意思と新しい状況にも瞬時に対応できるしなやかな感性が感じられた彼女が、アーシャの声を担当することになったのは運命的な必然だったのでしょう。
『ウィッシュ』日本版のアーシャの言葉の数々に熱いものが感じられ、観る者の心に突き刺さり、揺れ動かすのは、生田がそのひと言、ひと言に心を込めているから。
彼女が唄う「ウィッシュ〜この願い〜」に胸が高まるのも、それがただの歌詞ではなく、真の思いが込められた生きた言葉たちだから。
『ウィッシュ』日本版を映画館で観るのは、それを実感できる幸福な時間でもあります。
生田絵梨花が福山雅治らとともに完成させたミュージカル・アニメーションの魅力、力強さを自身の五感でしっかり受け止めて欲しい。
(ウレぴあ総研 ディズニー特集/ イソガイ マサト)