「ふるさと納税」利用してる? ステキな返礼品がもらえる一方で、税収減の自治体への影響は? 今後の課題について徹底プレゼン!【アナたにプレゼン・テレビ派】

【動画】ふるさと納税が自治体に与える影響【アナたにプレゼン・テレビ派】

広島テレビのアナウンサーが、気になるテーマを自ら取材して、お伝えする『アナたにプレゼン』。ふるさと納税について、宮脇靖知アナウンサーがプレゼンします。

そもそも「ふるさと納税」とは?

「ふるさと納税」は、2008年にスタートした制度で、寄附金税制の一つです。住んでいる自治体への納税とは別に、自ら選んだ活性化してほしい自治体に「ふるさと納税」として、寄附するシステムで、納税額にかかわらず、実質負担として2千円がかかります。大都市と地方の格差是正や、人口が減少している地域の税収の増加、あるいは地方創生に繋げていく目的があります。

例えば、「ふるさと納税」で5万円を寄付する場合、寄付額の30%以内の返礼品を、実質2千円で受け取ることができます。さらに、住んでいる自治体から、寄付した5万円から2千円を引いた4万8千円分が、翌年の所得税・住民税から控除される仕組みです。

「ふるさと納税」はどのくらい利用されてる?

2013年の約145億円から、2022年には約9654億円、この10年で、全国的に60倍以上伸びています。去年1年間で見ても、前の年から1.2倍に増えており、1兆円に届きそうな勢いです。広島県内に関しても、10年間で19億円から49億円へと、大きく増えています。

お勧めの活用の仕方として、物価高対策に活用するのはいかがでしょうか。小麦の価格高騰で、麺類の価格が軒並み上がっています。保存の利く麺類の他、油や調味料の値段も例年に比べて上がっているので、こうした商品を返礼品として選びます。また、2024年は、民間のお米の在庫量が低水準になる予定で、価格に上昇圧力がかかる可能性があるので、お米を選ぶのも選択のひとつです。

痛手になる自治体も…

ただ、控除額があるという事は、税金が減ってしまう自治体ももちろんあります。多くの人がいる地域、大都市にとっては、住人たちが払う税収が入ってこなくなり、減収しています。控除額ランキングを見ると、広島市は全国で13位。本来、51億円が入るべきだった税収が、入らない状況になっているということです。

広島市の企画総務局総務課に話を聞くと、「他の自治体に寄付を止めるのは困難です。今の制度上、仕方がない部分もありますけれども、財政上の支障はありません。」ということでした。「財政上の支障はない」というのは、総務省は、地方税、住民税が減収した部分関して、地方交付税・交付金を受けている団体に関しては、75%は地方交付税、交付金で賄うとのことです。

財政に詳しい広島大学大学院・角谷(かどや)快彦教授は、ふるさと納税の課題として、住民サービスの低下の可能性も考えられると話しました。2021年度、全国で約8300億円受け入れ、その費用の内訳として、50%近くがその返礼品の調達や送付であったり、広報や事務費用などに当てられています。本来、地方に入るお金が入ってこないということは、市民サービスや住民サービスが低下しても、おかしくないのではという課題があるという事です。

さらに角谷教授は、「見えないコスト」として、地方自治体の職員が、ふるさと納税があることによって、本来やるべき業務に手が回らなくなってくる可能性もあるのではないかと言います。ふるさと納税の事務作業は、どの返礼品にするのかというリストの作成、選ぶ基準を作り、発送もするなど多岐に渡ります。広島市に補填があるとはいえ、税収が左右されるので、今後大きな防災やインフラ、長期的な視点に立って予算を組む時に、税収が不安定になると、その見通しも立てにくくなる可能性もあるのではないかという事です。

角谷教授は、最後に「期待薄な経済効果」と話しました。ふるさと納税によって受け取ることができた返礼品を、スーパー見つけても購入せず、ふるさと納税を利用することで、この価値自体も上がることなく、実際の購入に繋がらない可能性もあるということです。そうすると、地域の活性化に繋がっているのかということを考えている必要があると、角谷教授は言います。物価高もあり、利用すると便利な側面もあるふるさと納税が、そういった側面も気を付けておく必要があるという事です。

【テレビ派 2023年12月11日放送】

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