クマ厳戒も発見できず 3人負傷の鶴来 捕獲作戦「空振り」、捜索打ち切り

おりや刺股を用意し、クマ潜伏の情報があった車庫を捜索する関係者=17日正午、白山市安養寺町

  ●引き続き「警戒を」 週末の住宅街不安

 男女3人がクマに襲われ重軽傷を負う被害が出た白山市鶴来地域で17日、駆除された1頭と別のクマが潜んでいる可能性があるとして、市などが同市安養寺町の住宅車庫を朝から捜索した。「クマ潜伏」に身構えて眠れぬ夜を過ごした住民が多くいる中、厳戒態勢を敷いて、ドローンやおりを用意し突入したものの発見できず、活動を打ち切った。市は引き続き出没が想定されるとして注意を呼び掛けている。

 捕獲作戦が行われたのは、16日にクマに襲撃され、軽傷を負った男性(75)方の車庫。男性は車庫のシャッターを開けた際、飛び出してきたクマともみ合いになって側溝に落ち、顔や腕をけがした。車庫に再びクマが侵入したとの目撃情報があり、シャッターが閉まっていたことから、市は別の個体がいる恐れがあると警戒し、夜間には車庫前で職員が交代で見張った。

 17日は午前8時から、市と猟友会、警察、消防関係者ら約30人で捕獲に取り掛かり、熱源を感知するセンサーを付けたドローンを倉庫内に飛ばしたり、カキやハチミツなどの餌を入れたおりを車庫前に設置したりしたが動きがなく、正午ごろに関係者が刺股を持って突入するもクマの姿はなかった。

 市には16日、巡回中の職員への連絡を合わせて約30件、クマの目撃情報が寄せられた。中には「子グマを見た」「クマを2回見た」との情報もあった。ただ、17日は市内で目撃情報が1件もなく、車庫から逃げた可能性も小さいことから、市は2頭目はいなかったのではないかとの見方を強めた。

 一方で、付近住民は不安な週末を余儀なくされた。

 現場近くの富光寺町に住む金丸和弘さん(77)は16日夜、玄関のシャッターを下ろすなどクマの侵入に備えたが「不安で寝付けなかった」と話した。

 観光ガイド「加賀白山ようござった」の磯部雄三会長(80)=同市荒屋町=は「街中にはクマの餌になるカキが多く残っている。対応しなければまた来るかもしれない」と警戒した。

 市教委は18日以降、現場に近い広陽小と北辰中の登下校に保護者による車の送迎を認める。

  ●取材中に男性被害

 2人目の被害者となった男性(75)が北陸中日新聞記者の取材対応中にクマに襲われていたことが分かった。同社によると、記者は男性の自宅や車庫の前で話を聞き、男性がシャッターを開けた際にクマが現れたという。当時、現場で取材していた記者には住民らから車外に出ないよう求める声があった。

 鈴木宏征編集局次長は「取材に協力していただいた方に被害が出た事態を重く受け止め、おわびします。取材のあり方を点検し、取材される人と取材者の安全確保に努めます」とコメントした。

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