大谷翔平選手の“10年7億ドル”契約から考える為替レートの行方…自動車各社は円安でどれくらい恩恵を受けた?

米大リーグのエンゼルスからフリーエージェントになっていた大谷翔平選手は12月9日、新たな活躍の場となるドジャースと10年契約を結んだことを発表しました。契約金は10年で総額7億ドル(約1015億円)という高額での大型契約となりました。これはプロスポーツ史上最大の契約になるということです。背番号は「17」で早くもニューヨークのMLB公式ショップでは、ドジャースのユニホームに大谷選手の名前と「17」をつけて販売を始めています。移籍先のドジャースはロサンゼルスが本拠地でワールドシリーズを7度制覇している球団です。過去には野茂英雄や黒田博樹、ダルビッシュ有などの選手が在籍していたので日本人にも馴染みがある球団だと思います。


2022年に108億ドルを突破したMLBの総収益

ご存知のとおり、大谷選手は投手と打者、どちらもこなせる「二刀流」のスター選手として大人気です。大リーグ6年目となる今シーズンはバッターとしてホームラン44本を打ち、ホームラン王のタイトルを獲得しました。ピッチャーとしても10勝をマークし大リーグ史上初となる2年連続で2桁勝利、2桁ホームランを達成しました。また今シーズンのMVP=最優秀選手を受賞しました。投票者満票で複数回のMVP受賞は史上初です。

これまで米大リーグでの史上最高の契約金は、エンジェルスのマイク・トラウト選手で2019年に12年で4億2,650万ドルを手にしています。大谷選手はこの金額を大幅に上回ったことに改めて驚かされます。このような高額の年俸を提示できる背景にはMLB(大リーグ機構)が持つ収益力にあります。MLBの総収益は2017年に初めて100億ドル(約1兆4,480億円)を突破したと言われています。2022年は108億ドル(約1兆5,638億円)に達したとのこと。またMLBが発表したレギュラーシーズンの観客動員数は約7,000万人を突破し、昨年を9.6%上回ったそうです。1試合あたりの平均観客動員数(2万9,295人)は+9.1%で、過去30年間で最高の伸び率です。ドジャースは10年連続でリーグトップの観客動員数を記録していて、野球人気に拍車をかけています。ドジャースはドジャー・スタジアムでのホームゲーム81試合で383万7,079人(1試合平均4万7371人)のファンを動員したということで、日本との規模の違いを感じずにはいられません。同リーグのストリーミングサービスのMLB.TVも120億分以上視聴され、シーズン最多視聴記録を更新したそうです。

円安で恩恵を受ける自動車各社

大谷選手の契約金が高額となった背景にはもう1つ要因があり、現在の円安が大きく影響していると思います。

契約金額から為替レートを計算すると1ドル=145円の計算となります。仮に1ドル=100円であれば総額700億円となり、今回の総額より315億円目減りする計算です。

株式市場では為替動向が株価を左右します。例えば日本の時価総額トップのトヨタ自動車を例に挙げると、海外で1万ドルの自動車が1台売れた場合、1ドル=145円で計算すると価格は145万円です。1ドル=100円であれば価格は100万です。同じ自動車を販売したにも関わらず、売却する価格が違ってきます。各企業は決算発表時に年ベースで想定為替レートを公表します。トヨタ自動車の今期の為替レートは125円の想定でした。今年に入り大幅な円安となった事を受け、トヨタ自動車は1円の円安で約450億円の営業利益を押し上げます。また、ユーロも円安に推移した事で、11月の決算発表時に想定為替レートを141円に変更し、1兆1800億円の増益要因となった事を公表しました。

主要企業20社で約2兆円の増益効果

トヨタ以外の自動車各社も円安の恩恵を受けています。主要企業20社で約2兆円の増益効果があると言われています。今年、日本株が堅調だった背景には円安効果があった事は間違いないように思います。来年は、日銀のマイナス金利の撤廃などを受け、円高傾向になるのではないかとの予想もあります。大幅な円高は株式市場にとってネガティブになる可能性もあります。

私も高校時代まで本格的に野球をやっていたので大谷選手の活躍には本当に感心し、心が踊ります。これからもより一層輝く選手であるよう応援しています。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!複数の証券口座から配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward]

© 株式会社マネーフォワード