自社業界の倒産 「増える」56.7%、「減る」3.7%  「過剰債務」の企業は 24.8%、 1年で5.0ポイント改善

~ 「業績予想」「過剰債務」「私的整理」に関するアンケート調査 ~

2024年は約6割(56.7%)の企業が自社業界で倒産が「増える」と予想した。「減る」は3.7%だった。一方、自社債務が「過剰である」と回答した企業は24.8%で、1年前(2022年12月)から5.0ポイント改善した。自社の債務状況が改善しながら、取引先や同業者への警戒感は逆に高まっていることがわかった。
東京商工リサーチ(TSR)は、12月1日~11日にアンケート調査を実施した。今年5月に新型コロナが5類に移行し、経済活動が活性化している。ただ、コロナ禍で大規模、かつ矢継ぎ早に実施された資金繰り支援の反動への警戒感が広がっている。

私的整理手続きの利用可能性は「ある」と回答した企業は4.7%で、2023年6月の5.8%から半年で1.1ポイント改善した。2024年の業績予想は、最多は「(売上)横ばい(利益)横ばい」の29.2%。「増収増益」は21.4%、「減収減益」は14.6%で、収益の厳しい見方が多かった。
アンケート結果は、自社の業績や債務への見通しは決して暗くない。だた、倒産増加への警戒感が取引萎縮や与信コストの増加に繋がる恐れもある。自社と取引先や同業者の評価に差が生じており、着実な経済活動の活性化には為替の安定や物価高の解消など外部環境の整備も急務だ。

※ 本調査は、2023年12月1日~11日に、インターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,174社を集計・分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1.2023年(1-12月)の倒産件数は、前年を大きく上回る見込みです。来年(2024年)の貴社業界の倒産動向は、どのように予想しますか?(択一回答)

「増える」が約6割
自社の属する業界の来年の倒産見通しを聞いた。「増える」は56.7%(4,471社中、2,539社)、「減る」は3.7%(168社)、「変わらない」は39.4%(1,764社)だった。同等の設問を設定した2023年6月の調査(2022年度の倒産予想)では、それぞれ57.3%、5.0%、37.5%だった。
「増える」と回答した企業が多い業種(中分類、回答母数10以上)は、2024年問題や燃料費高騰の影響が懸念される「道路貨物運送業」の85.5%(138社中、118社)が最多。
「減る」と回答した企業が多いのは、映画館やフィットネスクラブなどを含む「娯楽業」の26.6%(15社中、4社)、「宿泊業」の26.3%(19社中、5社)など、コロナ禍の谷を抜けた業界が目立つ。

Q2.貴社の来年(2024年)の業績はどのように見通しますか。1年間を通じた大まかな売上高と利益(経常利益ベース)の見通しをお答えください(択一回答)

「増収増益」は21.4%
最多は「(売上)横這い(利益)横這い」の29.2%(5,174社中、1,512社)だった。以下、「増収増益」の21.4%(1,110社)、「減収減益」の14.6%(756社)と続く。
「増収」(増収増益+増収横ばい+増収減益)は38.2%(1,981社)、「(売上)横這い」は40.0%(2,074社)、「減収」は21.6%(1,119社)。「増益」(増収増益+横這い増益+減収増益)は27.0%(1,399社)、「(利益)横這い」は44.4%(2,299社)、「減益」は28.5%(1,476社)だった。
売上・利益動向を業種別(業種中分類、回答母数10以上)でみると、「増収」トップは旅行や葬儀、結婚式場などを含む「その他の生活関連サービス業」の70.5%(17社中、12社)、「減収」トップは新聞や出版、広告制作が含まれる「映像・音声・文字情報制作業」の40.0%(20社中、8社)だった。
「増益」トップは「娯楽業」の68.4%(19社中、13社)、「減益」トップは「貸金業,クレジットカード業等非預金信用機関」の50.0%(10社中、5社)だった。

Q3.貴社の債務(負債)の状況は、次のうちどれですか?(択一回答)

「過剰債務」企業率、1年で5.0ポイント改善
負債比率や有利子負債比率など財務分析の定量数値に限定せず、債務の過剰感を聞いた。
「コロナ前から過剰感」は10.6%(5,059社中、539社)、「コロナ後に過剰感」は14.2%(720社)で、合計24.8%が「過剰債務」と回答した。
同一設問を設定した2022年12月のアンケートで「過剰債務」と回答した企業は29.8%だった。1年で5.0ポイント改善した。
「コロナ前から過剰感」、および「コロナ後に過剰感」と回答した企業を業種別で分析(業種中分類、回答母数10以上)すると、トップは「宿泊業」の63.6%(22社中、14社)だった。

Q4.貴社の借入金の返済見通しについて伺います。コロナ禍直前(2020年1月頃)と現在で返済見通しに変化はありますか?(択一回答)

「懸念あり」は12.1%
「コロナ禍直前は問題なかったが、現在は懸念がある」と「コロナ禍直前から懸念があり現在も懸念がある」を合計した「懸念あり」は、12.1%(5,079社中、618社)だった。同一設問を設定した2023年6月のアンケートでは14.5%で、2.4ポイント改善した。
「懸念あり」と回答した企業の業種(業種中分類、母数10以上)をみると、最も構成比が高かったのは、「飲食店」の56.0%(25社中、14社)だった。

Q5.貴社は、中小企業活性化協議会(旧・再生支援協議会)や事業再生ADRなどの私的整理手続きを活用して、経常黒字化や債務超過解消などを目指した収益性の向上のための取り組みを検討する可能性はありますか?(択一回答)

半年で1.1ポイント改善
「ある」は4.7%(4,923社中、233社)だった。同一設問を設定した2023年6月のアンケートでは5.8%で、半年で1.1ポイント改善した。
「ある」と回答した企業を業種別(全企業、業種45分類、回答母数10以上)でみると、トップは「飲食業」の13.7%(29社中、4社)だった。2023年6月のアンケートでは31.4%で、大幅に改善した。

Q6.Q5で「ある」と回答された方に伺います。私的整理を検討する上で重視することは何ですか?(複数回答)

「事業への影響」が最多
Q5で「ある」を選択した企業のうち192社から回答を得た。
最多は「現在の事業や取引に影響を与えないこと」の69.7%(134社)だった。 以下、「多額の費用を要しないこと」の66.1%(127社)、「簡潔で長期間を要しないこと」の45.8%(88社)と続く。
規模別では、「手続きに多額の費用を要しないこと」は大企業が42.8%(7社中、3社)、中小企業は67.0%(185社中、124社)で、25ポイント近く差が開いた。

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