TSR代表トニー・スチュワート、妻リア・プルーエットのシートを“引き継ぎ”NHRA最高峰昇格へ

 2022年終盤よりアメリカ最高峰NHRA(National Hot Rod Association/全米ホットロッド協会)主催の『NHRAキャンピング・ワールド・ドラッグ・レーシングシリーズ』に殴り込みを掛けた、北米モータースポーツ界を代表する“殿堂入り”男ことトニー・スチュワートが、来季2024年に向けた参戦計画を発表。

 最高出力1万1000PSを超える最上位クラス“Top Fuel dragsters(トップフューエル・ドラッグスター)”にて、2023年もタイトル争いを展開した妻リア・プルーエットが「家庭を築くことに専念する」ため第一線から退くことを決め、昨季より“Top Alcohol Dragster(トップアルコール・ドラッグスター)”に挑戦していたスチュワート自身が、そのシートを引き継いでの最高峰カテゴリー昇格を果たすことになった。

 自ら率いるトニー・スチュワート・レーシング(TSR)で参戦2年目を迎えたスチュワートは、自身の婚約者であるプルーエットを最高峰トップフューエル・ドラッグスターに、大人気のファニー・カーには“マルチタイム・チャンピオン”のマット・ヘイガンを送り込んだ上で、自身はマクフィリップス・レーシングとのジョイント参戦でNHRAへの挑戦を開始。この4月には『モービル1・マクフィリップス・レーシング・トップアルコール・ドラッグスター』でのキャリア通算4回目のスタートで、念願のシリーズ初勝利を収めるなど順調な戦績を納めてきた。

自らの率いるトニー・スチュワート・レーシング(TSR)で参戦2年目を迎えたスチュワートは、自身の婚約者であるプルーエットを最高峰トップフューエル・ドラッグスターに、そしてファニー・カーには“マルチタイム・チャンピオン”のマット・ヘイガンを送り込んだ

 そんななか、自身4度目のファニー・カー・チャンピオンに輝いたヘイガンに対し、最後の最後でダグ・カリッタ(マックツール・ドラッグスター)に王座を献上し、惜しくもランキング2位に終わっていた35歳のプルーエットは、伴侶であるスチュワートとの「幸せな家庭を築いていく計画」をさらに推し進めるべく、新たなシーズンで「TSRを途中で混乱に陥れるような事態が起きないよう」今季限りでNHRAへの参戦を休止することを決めた。

「人生の4分の3以上において、ドラッグレースは私の人生の重要な部分を占めてきた」と語ったプルーエット。

「NHRAでの27年間のレースキャリアとその生活が私という人間を形成しているし、シリーズが私に与えてくれた人生にとても感謝している。この一連の長い思考プロセスと、決して一夜にして成されたものではない決断を経て、今すぐ席を立つことが私とトニーにとって家族を始めるのに最善であると感じた」

 そんなプルーエットは、年明けの2024年2月上旬にフロリダ州ブレーデントン・モータースポーツ・パークで開催される“プロ・スーパースター・シュートアウト”に出場するのを最後に、スチュワートにシートを譲ることになった。

「私たちがTSRで共同で作り上げてきたものを考えると、これは最も難しい決断のひとつだった。成功したプログラムと非常に楽しいチーム運営の時間で、私のキャリア全体のなかでも最高のフィニッシュを迎えることができた」と続けたプルーエット。

「そこから離れるのは難しい決断かもしれないけれど、本格的なチャンピオン争いに入るずっと前から私はすでに決心していた。このチームの競争力の高さにずっと興奮しっ放しだったし、確立されたチームとともに非常に安全で、吟味された、優れたパフォーマンスを発揮するクルマでトニーをレースさせることができて、私自身も幸せ!」

そのプルーエットがドライブした『ダッジ・ダイレクト・コネクション・トップフューエル・ドラッグスター』
「今すぐ席を立つことが私とトニーにとって家族を始めるのに最善であると感じた」とプルーエット

■「私は妻をとても誇りに思っている」とスチュワート

 そんなプルーエットは、この2023年に『ダッジ・ダイレクト・コネクション・トップフューエル・ドラッグスター』をドライブして年間2勝を挙げ、キャリアハイとなるドライバーズランキング2位を獲得。そんな成長を遂げたシーズンを最後に、自身の伴侶に“夢の続き”を託すことになる。

「こうして“Winner-take-All”のシーズンフィナーレに出場し、トップフューエル世界チャンピオンシップで優勝するという長年の夢の実現に、これまでで最も近づいた瞬間だった」と最終戦を振り返ったプルーエット。

「私たちはそれを味わうことができるほど近くにいたけれど、それは私たちの時間ではなかった。結局のところ、多くの人が人生の最大の喜びとして共有しているもの……つまり自分の家族に私たちが祝福されるかどうかは、これからの私たち次第だと思う。トニーも私も私生活を非公開にすることを好むけれど、この発表をパートナー、チームメンバー、ファンと共有できることを光栄に思っている」

「いつシートに戻るかについての保証や約束はないけれど、できるだけ早く戻るつもり。私の心のすべては──とくに今年のように限りなく王座に近づいた後は──準備ができたらすぐにトップフューエルの運転席に戻るつもり、今はそう思っている。実際のところ、私はトニーが個人的にも職業的にも優れた人材とともに、パフォーマンスが良く安全なドラッグスターを手に入れられたことに興奮してるの」

トニー・スチュワート・レーシング(TSR)としては、プルーエットとヘイガンが両クラスで勝利を飾る“ダブル”も達成した

 最終的に4勝を飾りトップアルコール・ドラッグスターでも年間2位を得たスチュワートは、来季2024年3月の開幕戦『NHRAゲーターナショナルズ』でトップフューエルへのデビューを果たす。

「私は妻をとても誇りに思っている」と、モータースポーツにおける43年連続の勝利とNASCAR、インディカーに続くNHRAでの勝利記録も手にしている52歳のスチュワート。

「このような決断を下すのは非常に難しいことだろう。男性の視点から見ても、それを完全に理解できるとは思えないからね。競争力のあるプロのレーシングドライバーになり、家庭を築くためにシートから離れる決断をしなければならないというのは、ほとんどの男性が望むような立場や決断ではない」

「私たちは家族を作ることについて真摯に話し合ってきたが、これが彼女の決断だった。その話し合いのなかで、私たちは『そのタイミングは彼女次第だ』という結論に達した。彼女が今、それをやりたいのか。それとも何年も後にやりたいのか。私自身はとても協力的であり続けた。リアとニール(・ストラウスボー/クルーチーフ)が、私こそが彼女の代わりになるドライバーだと感じてくれたことに、とても恐縮しているんだ。妻とこのチームのためにそれができることを心から光栄に思っている」

婚約者の時代から伴侶を支え、2022年からは晴れてTSRでNHRA進出を果たしていたトニー・スチュワート(左)
「私こそが彼女の代わりになるドライバーだと感じてくれたことに、とても恐縮しているんだ」と語るスチュワートが、いよいよ最高峰クラスに挑む

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