喜山康平キャリア初のトライアウト、葛藤を乗り越えてリーダーシップをピッチ上で発揮

日本プロサッカー選手会(JPFA)が主催する「JPFAトライアウト」が今月12、13日に開催された。今季契約満了を言い渡されたJリーガー(元Jリーガーも含め)たちがピッチ上でスカウトたちにアピールした。

今季J3ギラヴァンツ北九州満了のMF喜山康平(35)は12日に参加し、11対11のゲームで先読みを生かしたカバーリング、DFラインを統率するコーチングとリーダーシップを見せた。

この日はセンターバックで出場した喜山。これまで中盤などでプレーしていたが、「この夏からセンターバックをずっとチームではやってたんですよ。アピールしようと思いました。サブ組ではあったんですけど、練習試合とかでセンターバックの楽しさや、この年齢で感じていた。強化の方がそのイメージもあまりない人も多いかなと思ったので、いいチャンスかなと思いました。それで(25分ハーフの試合2本を)両方センターバックをやらせてもらいました」とポジションコンバートの経緯を説明。

本職顔負けのカバーリング、ビルドアップ参加、鋭いタックルなどを披露して最終ラインで存在感を見せた。即席チームでもあってもチームメイトの名前を呼んで調整するなどして統率した。

喜山は「まず本当に参加して良かったと思います。チームは急造ではありますし、知らない選手も多かった。きょうのチームの中では、多分最年長だったので、なるべくみんながやりやすいように声がけしました。短いゲームではありましたけど、チームとして勝つことがいいアピールになるのかなと、みんなそれぞれがそこを目指してやれたと思います」と振り返った。

DFポジションは細かい約束事やセットプレー対策などを短い時間でまとめなければならない。そこはリーダーシップを取りながらチームをまとめあげた。

「(約束事は)大雑把に最初にもう決めちゃって、みんなで集まって守備を4-4-2で守りました。1本目に関しては。オーソドックスに中は締めて外回しにさせて、なるべく前からプレッシャーいったほうがみんなの躍動感が伝わると思った。そこはみんなでなるべくプレスをかけるようにしようと本当に大雑把ですけどを統一しました。ビルドアップに関しては相手が多分4-4-2だったので、そこで後ろを3枚にボランチを落としたり、サイドハーフを落としたりとかしながら攻撃していこうと大雑把に決めました。割とうまくできたと思います。

リーダーシップのところだったり、後からボールをつなげることは得意なので、そういうところでゲームコントロールしながらやれた部分は多かったかなと思います。もう少し背後や前線の選手を使いたかった部分はありますけど、どうしても25分でこういう展開になると全体が間延びしちゃうかなと思って、なるべく自分たちで押し込んでサッカーできるようにリズムを作るようには心掛けてやりました」

しっかり状況を見ながら味方を統率してチーム力を高めた。連係守備が攻撃を防ぐシーンもあり、喜山のリーダーシップが発揮されたように見えた。

葛藤を乗り越えて参加

今季から喜山は松本に加入するも、15試合中4試合先発と出場機会に苦しんだ。「シンプル(に戦力として)です。だから自分がやりたいという情熱や、やれることを見せる場として挑戦しようと思って来ました。年齢のことはもうしょうがないので、それをポジティブにそのぶん経験はいろいろ積んできたと思う」とシーズンを振り返った。

年齢も35歳となり、キャリアも終盤に入りつつある。それでもサッカーに対する情熱は燃え続けている。

「この1年すごく自問自答していました。同期の選手が結構引退していて、柏木(陽介)、田中順也、太田宏介…。そういう部分でも考えることはあったんですけど、自分はあとなん試合残して引退発表するとかそれは違うなと。まずやりきろうと思った中で、1ヶ月前ぐらいには満了になると聞いていたんですけど…。それでもまだやりたいと、どんどん情熱が出てきたので、ここで挑戦しようと思った」と喜山。

ただこのトライアウト参加には葛藤があった。選手キャリアで初のトライアウトー。ただ選手としては終わっていない、サッカー選手としてプレーがしたい。純粋なサッカーに対する情熱があったからこそ、覚悟を持って臨んだ。

「最初は(葛藤が)もちろんありました。若いときは『トライアウトに参加するときは終わりだ』と思っていた。でもこの年齢になって、今年も試合に出ていたらアレですけど、途中から出られなかった。だったら挑戦しようと思いました。そう決意をしてからはきょうがすごく楽しみで。天気も良かったですし、良いグラウンドでやらせてもらえて、すごく前向きに挑戦できたので本当に参加して良かったです」とやり切った表情を浮かべた。

喜山がトライアウトに参加すると知ったファン、サポーターは応援する声が多くあった。「自分は地方のクラブでとても応援してもらって、ここまでやってこれた部分は非常に大きい。次どこから声をかけてもらえるかは分からないですけど、まだプレーする機会をみなさんに届けたいです。まだやりたいので、是非決まったらまた見に来てほしいです」とファンにメッセージを送った。

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