たぬきケーキの甘洋堂(青森・八戸市)、1月5日閉店 88歳鈴木店主「菓子作り本当に好きだった」

甘洋堂のたぬきケーキ
ショーケース前で撮影に応じる(左から)達雄さん、寺澤さん、久子さん=18日

 半世紀以上にわたり地域に親しまれた青森県八戸市根城の和洋菓子店「甘洋堂菓子舗」が、店主の鈴木達雄さん(88)と妻・久子さん(82)の高齢化に伴い、来年1月5日の営業を最後に閉店する。数年前に県内で人気が再燃した「たぬきケーキ」を製造してきた店の一つ。達雄さんは「自分は菓子作りが本当に好きだった」と振り返っている。

 旧百石町(現おいらせ町)出身の達雄さんは、他県などで腕を磨き独立。1970年ごろ、現在地に開店した。「店の周囲は畑。結婚式や法事向けの注文を受けて生活できていた」(久子さん)。程なく店の前に道路が開通、来店客が増えていった。

 現在は夫婦と従業員・寺澤敏明さん(67)の3人で店を運営している。店頭に並ぶのは、チョコレートの生地にチョコがコーティングされているたぬきケーキ「ポンポコ」のほか、バタークリームケーキ、銘菓「りんごっこ」、ロールケーキなど約30種類。閉店を前に焼き菓子は製造をやめ、在庫限りとしている。

 達雄さんは上生菓子、引き菓子などを創作、業界発展に貢献したとして県卓越技能者に選ばれ、県褒賞も受賞した。数年前から体力の衰えを感じ、繁忙期以外は工場や店頭に立つ機会が少なくなった。「和菓子と洋菓子の両方を扱ってきた。当初は和菓子が主体だったが、近年は需要が減ってきた」と言う。

 久子さんは「夜間に未舗装の山道を運転して遠方に100人分以上の菓子を届けたこともある。店では客との会話が楽しみだった。閉店しないでと言われるけど、いつかはやめないといけない」と明るく語る。寺澤さんは「働いて40年以上になるが、それほど長い感じはしなかった」と話した。

 たぬきケーキは在庫を切らさないようにしてきたが、店頭に閉店を告げる張り紙を出して以降は客が増え、在庫がないこともある。無休で営業時間は午前9時~午後6時半。元日の午前は休むという。

© 株式会社東奥日報社