ニューハーフタレントとして活躍するはるな愛さん(51)が、兵庫県立農業高校(同県加古川市)で約800人の全校生徒を前に講演し、自身の経験を基に多様性を認める社会の大切さを説いた。(増井哲夫)
はるなさんは、同県姫路市出身のアイドル松浦亜弥さんの「エアものまね」で話題を集めた。テレビ番組でコメンテーターを務めるなど多彩な活動をしている。
講演は14日にあり、講堂に集まった生徒にはテーマのみを知らせ、誰が話すのかは秘密に。「この人です」との紹介ではるなさんが登場すると、歓声や拍手に包まれた。
「幼い頃、女の子になると信じていた」という。小学校入学を前に黒いランドセルを買い与えられ、ショックを受けた。仲良しは女子ばかりなのに、体操服の着替えや身体測定は男子と一緒なのが苦痛でしようがなかった。
中学校では男女の区別が強くなり、さらに違和感を覚えた。いじめに遭い「何度も自殺を考えた」。そんな時、知人を通じてニューハーフとして活動している人たちに出会い「ここが私の居場所だと思えた」。
高校生になり、「男らしく」が口癖だった父に「これからは女として生きたい」と打ち明けた。父は涙を流し「分かった。じゃあとことんやれ。絶対後悔するな」と言ってくれた。性別適合手術を受け、芸能界に入り活躍したはるなさん。「あの時死ななくてよかった。今、本当に幸せだから」と話した。
性的多様性についての最近の動きに触れ「以前は、男に生まれた自分が嫌だったけれど、今はそれも含めて自分が大好き。みんなも自分のことを全部愛してほしい」と呼びかけた。
最後に、生徒代表が「話を聞いて勇気をもらった。いろんな人が生きやすい社会にしないといけない」と謝辞を述べると、はるなさんは満面の笑みを浮かべた。