水道料金は値上げする? 人口減の長崎県、料金収入に影響の可能性 施設更新など課題も

1970年に完成した神浦ダム。長崎市の水道用水として1日当たり4万8000立方メートルの取水が可能=長崎市神浦下大中尾町

 市民生活に欠かせないライフラインの水。自治体の水道事業は一般家庭や事業所などからの料金収入を主な財源として運営されており、今後人口減少で収入が落ち込めば経営に影響を与える可能性がある。長崎県の県都・長崎市の料金は全国でも高い方だが、値上げの可能性はないのか。大村市は現行水準なら経営困難に陥る恐れがあるとしている。

■ 東京で驚き
 6年前、長崎市内の40代の主婦は夫の転勤で東京に引っ越した際、水道代(上下水道料金)の安さに驚いた。子どもは1人で3人暮らし。長崎市ではひと月6千~8千円だったが、東京は5千~6千円で済んだ。3年前に戻ってきた。最近の物価高騰で家計は圧迫され、「できれば水道代は下げてほしい」と願う。
 総務省の小売物価統計調査によると、一般家庭で水道を1カ月に20立方メートル使用した場合、2022年の長崎市の料金は、都道府県庁所在地と人口15万人以上の81市(東京は23区)のうち2番目に高い4515円。次いで佐世保市が3番目の4195円。長崎市は下水道使用料も高く5番目の3300円だった。

■ 特有の事情
 長崎市上下水道局によると、水道料金収入のうち約8割を施設の維持管理費・整備・更新費に充てている。この背景には同市特有の事情がある。
 水源に乏しく取水の9割以上は14カ所のダムから。九州では熊本市(小売物価統計調査の水道料金2640円)がすべて地下水から、大分市(同2812円)と宮崎市(同2959円)は8割を河川から取水しているのと比べても施設依存度が高い。また長崎市は起伏に富んだ地形も特徴で、高台に水をポンプで送る動力費(電気代)も余分にかかる。各家庭に配水するタンクも230機設置。同市と同じ中核市の57水道事業体の中でも4番目に多い。さらに40年の法定耐用年数を超える水道管が増え、老朽化の状態を評価しながら計画的に取り換えなければならない。
 一方、人口減少などで料金収入は今後減る見通し。17年度の給水戸数は21万7千戸だったが、26年度は20万7千戸と見込む。これに伴い26年度の料金収入も、17年度から10億9千万円減の82億3千万円となる見込みだ。

■ 規模適正化
 市は01年春、給水人口減少や施設整備費確保などを理由に平均6.998%値上げ(10年8月には経営改善で同3.14%値下げ)したが、今後値上げに踏み切る可能性はないのか。
 市上下水道局は「減少する使用量に合わせ施設規模の適正化に取り組むことが必要」とする。これまで浄水場の統廃合、各業務の民間委託、職員数の削減などに取り組み、今後も管路・配水槽の小規模化などを図る方針。本年度策定した5年間の中期財政計画では「各年度で黒字を確保できる見込み。現時点で値上げは検討していない」という。ただ電気料金や素材価格などの物価上昇には「さらなる経営努力が必要」としている。

■ やむを得ず
 一方、1960年代から人口が増え続ける大村市。同市上下水道局によると、今後、老朽化施設の更新や耐震化に多額の費用がかかる反面、人口増がここ数年で落ち着き給水人口も2032年度をピークに減少すると予測。現行の料金水準(メーター口径13ミリ・1カ月20立方メートル使用で3905円)では35年度に内部留保資金が枯渇し、経営が困難になる可能性があるという。
 このため同局は本年度から5年ごとに5%の値上げを計画していた。今年1月には、水道料金の在り方を考える有識者や各種団体関係者らの懇話会も「経営基盤の強化に向けた料金改定が必要」などと提言。ただ「市民生活や経済活動への物価高騰などの影響を考慮すると令和5年度の値上げは先送りする必要がある」とし、同局は応じた。
 同局の担当者は「今後、給水人口が減り、施設の更新が迫る中、料金改定はやむを得ない。ただ時期や額は決まっていない」と話している。

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