「クソ素人」「ゴミクズが」客に暴言、出禁通告…ラーメン店のSNS炎上が絶えないワケ

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老若男女問わず高い人気を誇る、“日本の国民食”とも言えるラーメン。しかし、近頃はSNSでの炎上が目立つことも少なくない。最近も千葉県にある人気ラーメン店「横浜家系ラーメン 蓮 京成大久保」が、Xで“暴言”を吐き物議を醸していた。

同店は12月5日、客が食べ残したと思われる残飯の写真を添えて《死んでください本当に そそくさと逃げるように帰るなよ 自分でよそってんだぞ 二度とくるなゴミクズが》と投稿。瞬く間に拡散し、荒い言葉遣いに批判の声が相次いだ。

同店は当該投稿を削除し、6日に謝罪のコメントを発表。暴言を吐いた理由について、《いかに無駄を無くしてお客様にたくさん食べてもらいたいかを第一に考える中で、ご飯を残されるという行為があまりにも自分の中で悲しく悔しくて、とても強い言葉を使ってしまいました》と釈明していた。

今年を振り返ると、ラーメン店によるSNSでのトラブルは多発していたと言えるだろう。

「4月に埼玉県の『夢を語れ埼玉』が、Xで酷評した利用客に《もう二度と来ないでください!》《クソ素人が来たなと思ってた》などと反論。ですが炎上したことから、店名変更する事態にまで追い込まれました。9月にはXで“背脂有料”の案内がなかったことに異論を呈したラーメンファンに、東京・高田馬場にある『でぶちゃん』が反発したことも。このラーメンファンは『でぶちゃん』を利用したわけではありませんが、双方の応酬は議論を呼びました。

10月にも茨城県の『中華そば いっけんめ』が、“スープが残っている丼にティッシュを入れないで”とXで注意喚起。《下げた途端にブチ切れる可能性が高まります》とも記しており、注目を集めました。どのラーメン店も、店主が投稿していたようです」(WEBメディア記者)

■求められるネットリテラシー「損をしてしまう可能性も大きい」

一括りにラーメン店といっても、大手チェーン店から個人店まで形態や規模は千差万別。そのいっぽうで、いまやSNSアカウントを持つ店も珍しくない。

「誰もが発信できる時代になったことの弊害なんだろうと思います」と指摘するのは、フードジャーナリストでラーメン評論家の山路力也氏。ラーメン店における炎上の背景について、話を聞いた(以下、カッコ内は全て山路氏)。

「コンプライアンスの面でもチェーン店などの企業は、発信することの重要性を意識しています。個人店もそうあるべきでしょうが、発信者がネットリテラシーに欠けていたり、ボキャブラリーが足りなかったりするため、炎上を引き起こしてしまうのだと思います。『まさかこんな大事になるとは思わなかった』との思いから、投稿の削除や謝罪をするのでしょう。

やはり店の名前を掲げて発信する以上は、お客さんに見られていることを意識した方が良いでしょう。上手に発信しないと、損をしてしまう可能性も大きいと思います。ネットで炎上してしまえば、店に対してプラスのイメージよりも、どちらかといえばマイナスのイメージがついてしまう。そうなると『行こうかな』と思っていた人も、敬遠してしまうでしょう」

とはいえ、なかには炎上を逆手に取る店もあるようだ。

「“背脂有料”の議論を巻き起こした『でぶちゃん』の例を挙げれば、明らかに拡散されることを意識して刺激的な文言を選んで投稿することで、世の中への問題提起と自店の認知度を高めています。メディアからの取材も含めて、自分の投稿によってどんなハレーションが起こるのかを想定して投稿しているので、投稿を消したり謝罪することはまずありません」

■店側の発信はある種の“逆襲”も、炎上は第三者の影響が大きい

ただ、店側の発信が増えたことは、ある種の“逆襲”でもあるようだ。ラーメン文化が発展したのは、ネットユーザーによって店が発掘された側面も強いという。

「スマホが普及する以前は、主にネットスキルのある人がラーメン店の情報を発信していました。基本的に“食べ手”が中心になっていたわけです。反対に店側が発信できる機会や場所は、ごく限られていました。後にブログや『食べログ』のようなグルメレビューサイトなどが出てきても、結局、“食べ手”がラーメン店について味や接客などを評価してきたのです。

店側からすれば、サンドバック状態ですよね。でもいまや、店側もSNSやYouTubeなど発信ツールを持つように。これまでは言われ放題だったけれど、“こんなマナーの悪い客がいた”と言えるようになりました」

そもそもラーメンの注目度が高いのは、身近な食べ物というだけでなく、店数や情報の発信者が多いことも理由の1つだという。山路氏は、「食べ歩きが好きな人も多いですし、ラーメン好きな人はSNSで情報を収集している人も多いです。すでに一定のコミュニティがあるということも、ポイントでしょう」と語る。

しかし、とりわけ個人店の発信が炎上してしまうのは、全く関係のない第三者の影響も大きいという。山路氏はこう指摘する。

「ラーメン好きの人たちはSNSなどで常に情報を収集しているので、どこのラーメン屋さんがどんな発言をしたかなどは把握していますし、その発言の背景についても理解出来る部分が少なくありません。本来ラーメンのコミュニティ内で完結しているような些末なやり取りが無関係な不特定多数の人たちの目に触れてしまうのが、今のSNSを中心にしたインターネットの構造です。それをネットメディアやマスコミが面白がって取り上げることで広く拡散されて、さらに無関係な人たちへと伝わって炎上していきます。上場しているような大手チェーン店ならまだしも、小さな個人店のいざこざをネットメディアなどが取り上げなければ炎上などの騒ぎにはならないのではないでしょうか」

炎上は人々の関心の高さによるだけでなく、時代を象徴する出来事の一つでもあるようだ。

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