過密日程にも負傷禍にも負けないチームは…/原ゆみこのマドリッド

[写真:Getty Images]

「準々決勝まで追っかけ旅行を待つのは微妙かな」そんな風に私が複雑な心境になっていたのは月曜日、CL16強対戦の組み合わせが決まったのを知った時のことでした。いやあ、結局、皆が期待していたコペンハーゲンやポルトはスペイン勢の4チームとは当たらず、レアル・マドリーはライプツィヒ、アトレティコはインテルとそれぞれ、アウェイの1stレグを2月13日、20日にプレーするんですけどね。もちろん、PSGと顔を合わすことになったレアル・ソシエダより、ずっとマシな結果になったシメオネ監督のチームとはいえ、バルサの相手ナポリなど、先日、サンティアゴ・ベルナベウでのグループリーグ5節で見て、あまり強いチームという印象は受けなかったんですが、え?それはremontada(レモンターダ/逆転劇)の鬼のマドリーだから、ジョバンニ・シメオネに先制されても、アンギサに同点にされても、最後は4-2にして、勝てたんだろうって?

まあ、確かにその通りではありますが、グループリーグではソシエダと2分けに終わったインテルながら、現在、セリエAでは首位。5位のナポリより、最終節には無敵のメトロポリターノで2-0と負けるのを私が目撃した11位のラツィオより、全然、強いのは当たり前ですが、正直、アトレティコの場合、お隣さんと当たったライプツィヒにすら、2019-20シーズンの準々決勝で敗退していますからねえ。それも16強対決でリバプールを破る波乱を起こした後、コロナ禍で開催が8月にズレ込んで一発勝負となり、千載一遇のチャンスと言われながらもコロッと負けたという、黒歴史があるため、決して羨めなかったりするんですが、どちらにしろ、今季のグループリーグでもオウンゴールを2本も入れてくれたフェイエノールトにしか勝てず。重度の内弁慶を治さないことには、CLでも明るい未来は望めないかもしれませんね。

まあ、そんな先の話はともかく、今は先週末、リーガ17節のマドリッド勢の試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。今回、金曜試合に当たったのは弟分のラージョの方となり、エル・サダルでオサスナと対戦。それがどうやら、前節、セルタとスコアレスドローとなったホームゲームに続き、フランシスコ監督のチームは深刻なゴール日照り期に突入していたよう。ええ、この日も先発となったRdT(ラウール・デ・トマス)は当たらず、後から入ったエヌテカ、カメージョも得点できなかったんですが、最悪だったのは、いよいよ大詰めとなった後半ロスタイム5分、昨季まで2部の弟分、レガネスにいたアルナイスの蹴ったCKから、ラウール・ガルシア・デ・アロにヘッドを決められてしまったこと(最終結果1-0)。

おかげで虎の子の勝ち点1も失い、とうとう白星なしが7試合(4分け3敗)に。幸い、順位は11位とあまり変わらず、ヨーロッパの大会出場圏と降格圏、どちらも勝ち点7差と程々のところにいるんですが、この流れで今年を終了すると、年明け2日、7年前の1部再昇格が決定した試合でファンがピッチに雪崩込んだ件で無観客試合を課された処分が何故か、今頃になって実施。コリセウムを使えなくなったもう1つの弟分、ヘタフェが兄貴分のメトロポリターノを借りて開催するダービーにも前向きな気分で挑めないかもしれませんからね。

火曜に迎える年内最終戦、エスタディオ・バジェカスでのバレンシア戦ではどうにかして、今季のリーガホームゲーム2勝目を挙げてもらいたいものですが、先週末はバラハ監督のチームもメスタジャでバルサと1-1で引き分け。勝ち点が同じ身分でありながら、強気になっていそうなのは怖いところかと。その一方でヘタフェは土曜にセビージャとサンチェス・ピスファンで対戦したんですが、いやあ、相手は先週ミッドウィークにはヨーロッパの大会から完全撤退が決定。尾羽打ち枯らしていたおかげもあったんでしょうが、でもまさか、今季まで1勝もしていないアウェイでいきなり、0-3の完全勝利を遂げていたから、ビックリさせられたの何のって。

そう、マタのシュートがファンルの腕に当たり、開始早々5分にはマジョラルのPKで先制したかと思えば、36分にはグリーンウッドからラストパスを受けたマタが決めて、嬉しい今季初ゴールをゲット。混乱しきったセビージャから、ほとんど反撃を受けないまま、後半40分には再び、ファンルがエリア内でハンドを犯し、うーん、おそらくこの時はマジョラルもリーガで2位となる10得点を達成したため、チームメートに花を持たそうと思ったんでしょうかね。今度はグリーンウッドがPKを成功させ、とうとう3点まで行ったんですが、おかげでメンディリバル監督を引き継いで以来、格下相手のコパ・デル・レイ1、2回戦以外、1勝も挙げられなかったディエゴ・アロンソ監督が試合終了後、30分もしないうちに解任されるという悲劇をセビージャに引き起こすことに(最終結果0-3)。

これで一時はラージョ、バレンシアと三つ巴だった中盤の位置を抜け出し、8位となって、現在、コンフェレンスリーグ出場圏の7位にいるベティスまで勝ち点2と迫ったボルダラス監督のチームだったんですが、ただねえ。彼らの年内最終戦は火曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)、奇しくもメトロポリターノ連戦その1となるアトレティコ戦ですからね。実際、ヘタフェはこの兄貴分を超苦手としており、2012年にコリセウムで勝ったのを最後に白星がなく、ボルダラス監督自身もシメオネ監督に勝ったことがない上、相手はホームで破竹の20連勝中。

唯一、ヘタフェが心の拠り所にできるのはまさに、今年最後にアトレティコがホームで勝ち点を逃したのが2月の彼らとの対戦で、1-1と引分けた時だったことですが、いやあ。当時のヘタフェを率いていたキケ・サンチェス・フローレス監督が月曜にはセビージャの新指揮官となり、延期されていた4節を戦うため、この土曜にメトロポリターノに乗り込んでくるのも何か、皮肉ではありますよね。

え、そうやって私がアトレティコの報告を遅らせているのは、またしても近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で歯ぎしりしたくなるような試合を見せられたからなんじゃないかって?まったくその通りで、何せこれでもう、ラス・パルマス戦、バルサ戦に続いて、眠ったままピッチに入った結果、リーガでアウェイ3連敗となってしまいましたからね。クラブ創設125周年を祝うイベントが試合後に予定されていたサン・マメスでのアスレティック戦でも負けず劣らずの悲惨な立ち上がりで、序盤からサンセットやイニャキ&ニコ・ウィリアムス兄弟らにシュートを撃たれまくり、GKオブラクがいなければ、前半中から大差となっていたかと。

加えて、この日も3度とパスが繋がらない状態に陥っていた彼らは時間が経つにつれ、敵陣に切り込んでボールロストするのが怖くなったんでしょうかね。ビッツェル、エルモーソ、そして意表を突いて先発に入ったソユンチュの3CBとオブラクの間で延々とボールを回し、何故か、ボールポゼッションだけは異様に高いという不思議な現象を起こしていたんですが、とうとう34分にはソユンチュがエリア内でニコを倒し、PKを献上。この時には私も観念したものでしたが、ラッキーにもサンセットがPKを天高く撃ち上げてくれたため、もしや、かろうじて0-0で乗り切り、ソユンチュ、モリーナをヒメネス、デ・パウルに代えた後半には心を入れ替えて、アトレティコも攻勢に出てくれるんじゃないかと期待したところ…。

全然でした。だってえ、6分にはもう、アンデル・エレーラのクロスをエリア内から、見事な程、フリーだったグルセタに決められて、先制点を奪われているんですよ。それどころか、シメオネ監督は15分にはメンフィス・デパイとコレアを投入したんですが、サウールはともかく、チームの旗艦船であるグリーズマンを引っ込めるって、これはもう、白旗を挙げたってこと?いえまあ、19分にニコが決めたgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)には確かに脱帽するしかありませんけどね。その3分後にはモラタもアスピリクエタに代えたとなると、いくら終盤にはジョレンテの惜しいシュートがあったって、本気で逆転する気があったとは思えませんって(最終結果2-0)。

うーん、試合後のシメオネ監督は「Hoy es el día que más tranquilo estoy/オイ・エス・エル・ディア・ケ・マス・トランキーロ・エストイ(今日はより平静でいられる日だ)。選手たちは全力を尽くしているのを知っているし、彼らを信じている。批判するところはまったくない」とあっさりしたものでしたけどね。何故にアウェイでプレーするとこんな状態になってしまうかの説明は過密日程による疲労以外、「Nos han superado en todas las facetas del juego y hay que felicitar al rival/ノス・アン・スペラードー・エン・トーダス・ラス・ファセタス・デル・フエゴ・イ・アイ・ケ・フェリシタール・アル・リバル(ウチはプレーの全ての面で上を行かれた。相手を祝福するばかりだよ)」というキャプテンのコケを始め、誰からもなかったんですが、いやあ。

そんなのお隣さんを筆頭にヨーロッパの大会をプレーするチームは皆、同じですしね。これでもう、今季アウェイ8試合で1分け4敗となったとなれば、オブラクも「No podemos jugar con una cara en casa y otra fuera, así no se pueden ganar los títulos/ノー・ポデモス・フガール・コン・ウナ・カラ・エン・カサ・イ・オトラ・フエラ、アシー・ノー・セ・プエデン・ガナール・ロス・ティトゥロス(ホームとアウェイで別の顔でプレーすることはできない。それではタイトルを獲得できないからね)」と言っていたように、リーガでもずるずる後退していくばかりですし、実際、その日の最終時間帯ではバルサが勝ち点1増やしたため、アトレティコは再び4位に逆戻りすることに。

まあ、その辺はシメオネ監督も選手たちにビデオを見せて、どこがダメダメだったのか、教育する予定のようなので、ええ、恐怖のアウェイゲームも年明け3日のジローナ戦までありませんからね。月曜にはアラベスをモンテリビで3-0と下し、単独首位を維持したミチェル監督のチームの前で恥ずかしくないプレーを見せてくれることを祈りながら、年内はメトロポリターノの神通力を信じるばかりですが、はあ。首位から勝ち点10っていうのは果たして、シーズン後半で挽回可能なものなんですかね。

そして日曜はマドリーが年内最後のホームゲームとなったんですが、ええ、ここまで先週ミッドウィークにヨーロッパの試合をプレーしたチームは0-0で引き分けたレアル・ソシエダとベティスを含め、誰も勝利を挙げていませんでしたからね。水曜にCLユニオン・ベルリン戦をプレーしたマドリーと木曜にELスタッド・レンヌ戦をプレーしたビジャレアル、双方アウェイで2-3の勝利で、余力が残っているのはどちらかという興味はあったんですが、いやもう、一流のチームは体力も一流なんです。

その夜は一気に気温が1℃近くまで下がったせいで、サンティアゴ・ベルナベウの天井を閉じてのキックオフとなったんですが、前半25分にはマドリーが先制。ええ、ルーカス・バルケスのパスをモドリッチがワンタッチでエリア内送り、リーガ得点王への道をひた走るベリンガムがヘッドで決めて、自身13得点目としたんですが、ビジャレアルにはその3分後にアレックス・バエナが序盤にルーカス・バスケスに踏まれた足の痛みに耐えかねて、交代を余儀なくされるという不運も。ただ、マドリーを襲った不幸はそんなものではなく、35分にはジェラール・モレノを追ったアラバが左ヒザの前十字靭帯を断裂しちゃったから、さあ大変!

それこそ、8月のクルトワ、ミリトンに続く重傷で、時期的にも今季絶望となってしまったのには、アンチェロッティ監督も「Nunca me ha pasado de tener tres cruzados en pocos meses/ヌンカ・メ・ア・パサードー・デ・テネール・トレス・クルサードス・エン・ポコス・メセス(たった数カ月で3人も靭帯断裂するなんて、経験したことがない)」と驚いていたんですけどね。この試合はナチョが入って、何とかなったものの、ミリトンが3月とか、4月に戻って来るまで、マドリーの本職CBが2人しかいないって、かなりヤバくない?

とはいえ、ビジャレアル戦の方は他にも負傷者が複数いるマドリーだったにも関わらず、39分にはモドリッチが蹴ったCKをリュディガーが頭で落とし、ルーカス・バスケスが繋いだ後、ロドリゴがゴールを決めて2点目をゲット。前半終盤にふくらはぎを痛めたジェラール・モレノ、そして筋肉痛のアルビオルが後半から、セルロートとクエンカに代わった相手は、いえ、9分にはモラレスが1点を返し、最低限の意地は示したんですけどね。19分にはブライムがドリブルで上がり、クエンカを切り返して、3点目を挙げると、その4分後にはクエンカにエリア内で猛タックルを受け、ペナルティを取ってもらえても不思議がないロドリゴを無視して、モドリッチが今季自身初得点を決め、とうとうスコアは4-1になっちゃいましたっけ。

いやあ、これにはマルセリーノ監督など、「ここ3試合でウチは9失点。Si encajamos tres goles de media... estaremos en Segunda División/シー・エンカハモス・トレス・ゴーレス・デ・メディア…エスタレモス・エン・セグンダ・ディビシオン(1試合平均3失点では2部行きだ)」と深刻な表情で自戒していたんですけどね。ただ、それには当然、過密日程が影響していたのは確かでしょうし、試合をこなすごとに負傷者が増えていくこともありがちで…ホント、何でマドリーだけ、「Lo que tiene que hacer el equipo es aguantar como hemos hecho/ロ・ケ・ティエネ・ケ・アセール・エル・エキポ・エス・アグアンタール・コモ・エモス・エッチョ(チームがやらないといけないのは、ここまでやってきたように耐えること)」(アンチェロッティ監督)ができるんでしょう。

何にせよ、せっかく日曜夜は首位に返り咲きながら、翌日には再び、ヨーロッパの大会とは今のところ、縁のないジローナに勝ち点2差をつけられてしまったマドリーは今週木曜午後9時30分から、奇遇にもこちらもアラベス戦で仕事納め。まあ、ここを乗り切れば、年明けにはビニシウスやカマビンガ、ギュレルらも戻り、中盤から前は人員も増えるため、それこそゴールの方は心配することはなさそうですけどね。この日、ベルナベウのパルコ(貴賓席)に見学に来ていた、来年夏に入団予定の17才のFW、エンドリック(パルメイラ)など、自分の居場所があるのか、ちょっと心配になっちゃったかもしれませんよ。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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