谷川氏(衆院長崎3区)も任意聴取 複数ルートでパーティー券販売 自民党派閥の裏金疑惑

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑の解明を目指す東京地検特捜部は、4千万円超のキックバック(還流)を受け取ったとされる安倍派の谷川弥一衆院議員(長崎3区)からも任意で事情を聴いている。関係者によると、パーティー券を複数のルートで売りさばいており、支援者からは「ありのままを県民に説明して」と求める声が聞かれた。
 「付き合ってもらえませんか」-。大村市の男性は谷川氏の秘書に懇願されて何度か同派のパーティー券を購入した。1枚2万円の出費。東京の会場に行くつもりはないが、自民を支持しており、仕方がないと受け止めた。
 県内関係者によると、同派のパーティー券は秘書らが毎年販売。東京から地元の事務所に全体の販売枚数が伝えられ、「多い時で秘書1人当たり50~60枚がノルマとして割り当てられた」という。ただ、還流の仕組みについては「(県内関係者に)全く知らされていなかった」と驚く。
 ほかにも販売ルートがあった。谷川氏の関係会社の元社員は「ごく少数の社員が券を管理していた。(谷川)代議士とも売り先を話し合っていたようだ」と証言。社内各職場に下請け業者などが記されたリストが配られ、パーティー券と振込用紙が入った封筒を届けて回っていたという。
 谷川氏は党離島振興特別委員会委員長を務め、国境離島新法の成立など地域振興に尽力した。後援会の島信行会長は「還流を自分の懐に入れることはしないはず」と信じる。その半面、「収支報告書への不記載は本人の落ち度。地元に貢献してきたが、帳消しにはならない。(疑惑が事実とすれば)今までの功績を棒に振ってしまいかねない」と惜しむ。
 裏金疑惑について、谷川氏は10日に「事実関係を慎重に調査・確認し、適切に対応する」と述べるにとどめている。19日、谷川氏事務所への家宅捜索はなかった。地元五島市の支援者は疑惑が浮上したことに落胆し、こう望んだ。「結局は本人しか分からないこと。県民にありのままを語ってほしい」

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