売り上げ好調の佐世保競輪 「自治体のドル箱」復活なるか 市財源への繰り出し大幅増も、残る課題

車券売り上げが好調な佐世保競輪場=佐世保市干尽町

 長崎県佐世保市の競輪事業収益から市一般財源への繰り出しがここ数年、年5千万円ペースで増えている。コロナ禍の「巣ごもり需要」に支えられた佐世保競輪場(同市干尽町)の車券売り上げ増が、コロナ禍収束後も高止まりしていることが背景にある。かつて「自治体のドル箱」と呼ばれた公営ギャンブルは長らく低空飛行を続けてきたが、冬の時代に終わりを告げることができるのか。

◇“ライン”先頭に
 「飛躍的に収益が増加し、昨年度は一般会計に3億5千万円を繰り出した。引き続き安定した競輪事業の運営に努めたい」。今月12日にあった市議会の一般質問。答弁に立った宮島大典市長は好調な競輪事業に胸を張った。質問した古賀豪紀議員は「市長にはぜひ“ライン”の先頭に立って走ってほしい」と競輪用語を交えながら、佐世保競輪のさらなる魅力アップを求めた。
 「閉鎖的で雰囲気が暗い」などマイナスイメージが根強い競輪場の存在意義は、市財政への経済的貢献があればこそ。市競輪事務所によると、一般財源への繰り出しは2019年度までの5年間、年間1千万円にとどまっていたが、コロナ禍が深刻化した20年度に一気に2億5千万円に増額。年を追うごとに5千万円ずつ上積みし、本年度は予算ベースで4億円を繰り出す予定だ。

佐世保競輪の市一般財源への繰り出し額と車券売り上げの推移

 繰り出したお金は特定の事業に充てる仕組みを取っていないため使い道が見えにくいが、市は来年度から一般財源で中学3年の給食費無償化を予定するなど、多額の予算を伴う事業が控える。市財政課は「厳しい財政状況の中、ありがたい財源だ」とする。

◇ネット投票浸透
 繰り出し額の上積みは車券の売り上げに比例する。19年度に約150億4千万円だったのが、20年度は約220億1700万円、21年度は約245億3500万円、22年度は約259億8300万円と順調に伸びた。本年度も22年度と同規模を見込む。
 ここまで回復したのはスマートフォン一つでどこからでも車券を購入できる「ネット投票」が浸透したことが大きい。ネット投票はコロナ禍の巣ごもり需要の中で地位を不動にし、いまや車券売り上げの約8割を占める。市競輪事務所は「ネットで全国の競輪ファンに購入が広がったことが(回復の)大きな要因」とする。

◇他との差別化も
 ただ、こうした回復傾向は佐世保競輪に限った事象ではなく、全国の競輪場も同じ。ここから先、一般財源への繰り出しを安定的に続けるには他の競輪場との差別化も必要となる。古賀議員は「さらに売り上げを伸ばすにはビッグレースの誘致と市民が気軽に行ける親しみやすい空間づくりが欠かせない」と話す。
 佐世保競輪場は現在、本場開催と並行して、老朽化が著しいメインスタンドを全面改修中。近くに子どもも集える開放的な憩いの広場の整備も計画している。工事中はビッグレースを誘致することが難しいが、市は2025年秋の運用開始後に誘致を本格化させたい考えで、宮島市長は「積極的にトップセールスしたい」と語る。

© 株式会社長崎新聞社