パンチパーマのおばちゃん役で存在感 俳優・成田沙織さん(青森市浪岡出身)「私は飛び道具」

「場面場面で観客の心をどう動かすか、いつも考えています」と話す成田さん=東京都新宿区

 俳優成田沙織さん(44)=旧浪岡町(現青森市)出身=が登場すると、水面にさざ波が立つかのごとく、舞台の雰囲気がちょっぴり変わる。そのたたずまい、フルスイングの演技、そして全身から放たれる独特の存在感…。狙っていないからこそのおかしみが、そこにはある。

 「私は『飛び道具』。観客を飽きさせないことが自分の仕事です」

 個性的な脇役として大物俳優との共演が続いた。高橋惠子主演の「そして母はキレイになった」をはじめ、今年夏には尼神インター誠子も名を連ねる「明けない夜明け」に出演。藤原紀香が国民的キャラクターを演じる「舞台 サザエさん」では、カツオの幼なじみ・花沢花子役で注目を浴びた。

 役者人生の中で心に残るのは、浅虫温泉を舞台にした「雪まろげ」だ。高畑淳子が主演し、成田さんが津軽弁の市役所職員を好演したこの芝居は、2019年に青森市で大千秋楽を迎えた。「満員の地元の人たちが見に来てくれたことがうれしかった。ダントツの思い出です」

 演劇を始めたのは27歳と遅咲き。知人の一人芝居を見た後に参加した飲み会で、「あなたもやってみない?」と主催者から声をかけられたのが大きな転機になった。

 自ら書いた台本で全編津軽弁の一人芝居を3度やり、劇団にも呼ばれるように。劇作家・演出家の田村孝裕の目に留まったことで大型舞台への扉が開いた。七戸町出身の劇作家・演出家山田百次にも重宝され、来年3月には劇団「ホエイ」の「クチナシと翁」に出演する。

 成田さんと言えば、パンチパーマのおばちゃん役が強烈な印象を残す。テレビ番組の再現VTRで、スーパーのおかず売り場にある無料配布のソースを大量に持ち帰る厚かましいおばちゃんなどを熱演した。パンチパーマは舞台の役づくりでかけたが、どんどん出演依頼が舞い込んだという。「おばちゃん役を極めたい。今が頑張り時」と本人は至って真剣だ。

 津軽弁も強力な武器だ。あるオーディションでは、なまったまま役を演じ、審査員の大爆笑をさらった。「方言でしゃべる変な俳優がいる」と一つの役が次の役を呼び込んだ。「津軽弁ってすごいなと思った。私の芝居を見て、津軽弁の面白さを感じてほしい。『王林ちゃんも良いけど成田も良いな』と思ってもらえれば」と目標を高く持つ。

 コロナ禍で演劇が軒並み中止となり、「地元へ戻ろうかな」と弱気になったことも。でも今は、もう少し東京で頑張ってみるつもりだ。「テレビ出演をもっと増やしたい。青森の番組にも出てみたい。若手より頑張るし、やる気と元気は誰よりあります!といつも言っています」

 かと思えば「私は自分に自信がないし、面白いと思ってもらえるんだろうかっていつも不安なんです…」とぽつり。素顔はどこまでも謙虚で真面目な人でした。

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 <なりた・さおり 1979年青森市浪岡生まれ、東京都在住。青森明の星高校、放送芸術学院専門学校(大阪市)卒業。同校に在籍中、同級生と津軽弁&関西弁の漫才に挑戦。21歳で上京し、27歳から芝居を始めた。劇作家・演出家の田村孝裕や山田百次=七戸町出身=の舞台に出演。映像関連では「痛快TVスカッとジャパン」(フジテレビ系)、映画「今日から俺は!!劇場版」「ブラックナイトパレード」など>

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