新渡戸家への旧記念館無償譲与決まる 青森・十和田市議会、調停合意案を可決

新渡戸家側との調停合意に向けた追加議案を賛成多数で可決した十和田市議会=19日午後0時50分ごろ

 十和田定例市議会は最終日の19日、旧市立新渡戸記念館を巡る市と新渡戸家の調停に合意する議案を賛成多数で可決した。市が建物を新渡戸家に現状のまま無償で譲与することが決定し、耐震診断結果などを巡り8年以上にわたって続いてきた市と新渡戸家側の対立が解消に向かう。

 同議案の質疑では、市側が調停合意案の経緯について「新渡戸家側が2015年に市側が示した耐震診断結果を受け入れる姿勢になり(譲与後、第三者を立ち入らせる場合は)必要な改修工事の実施を条件とすることができた」などと説明。竹島直樹議員(柊=ひいらぎ=の会)が反対討論を行い「市は耐震強度が不足し補強も困難であるとし、記念館解体を主張してきた。公共施設管理計画でも記念館は解体して新たに歴史館を整備すると明記している」と、市に一貫した対応を求めた。議長を除く出席議員19人による起立採決の結果、16人が賛成し可決した。

 小山田久市長は議会終了後の会見で「多くの市民が『裁判をやめてほしい』『不名誉なことだ』と思っていただろう。一区切りついたという思いで、ほっとしている」と述べた。新渡戸家側は「裁判が終わったわけではないのでノーコメント」とした。

 議案によると、記念館は24年3月1日に新渡戸家側へ譲与。新渡戸家側は改修工事を実施して安全を確保した場合に限り、第三者を立ち入らせて資料の展示・観覧を行えるが、改修は耐震診断の結果を前提に行うとしている。

 市側は、記念館廃止条例案を巡る15年からの行政訴訟などを経て20年8月、同館の明け渡しを求めて青森地裁十和田支部に提訴。今年12月6日に民事調停に移行し、13日に同支部が調停条項案を提示していた。

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