職人の手仕事細部まで 講演会に80人、小笠原記念館(唐津市)の価値再確認

約80人が参加し、今井兼次が設計した小笠原記念館の価値を再確認した講演会=唐津市呉服町の義経の館

 スペインの建築家ガウディを日本に紹介し、日本二十六聖人記念館(長崎市)など多くの名建築を残した今井兼次(1895~1987年)が設計し、今月末で閉館する唐津市の小笠原記念館をテーマにした講演会が17日、同市の義経の館で開かれた。県内外から建築家ら約80人が参加し、細部にわたって職人の手仕事が残る価値を再確認した。

 建築保存に取り組む国際学術組織「DOCOMOMO Japan」の副代表理事・鯵坂徹さんが登壇した。鯵坂さんは自然光を取り入れる窓、人影が映らないよう傾けた展示ケースなどを例に「細部まで工夫され、職人の手の跡が残っている。傾けたガラスケースは建築学会の指針として示されていて、当時の建築の考え方を忠実に守っている」と今井による設計を高く評価。蔵を想起させる設計や展示室への採光が、代表作の根津美術館(東京都、すでに解体)と類似していることも紹介した。

 記念館は1956年に建設され、旧唐津藩主・小笠原家の資料を展示している。27日に閉館され、市は老朽化のため2024年度の解体を計画している。鯵坂さんによると、近年の研究で50年とされた鉄筋コンクリートの寿命は延びているといい、「調査はしていないが、今のまま使うことができるかもしれない」と語った。

 意見交換会では「近代建築を追体験する財産として価値がある」「閉館で突然脚光を浴び、初めて訪れた。応援していく機運を盛り上げたい」などの声が上がった。主催したNPO法人からつヘリテージ機構の菊池郁夫理事長は「解体されるにしてももう少し延ばし、市民が利用方法を考えられる期間がほしい」と建物の活用を検討するよう求めた。(横田千晶)

今井兼次が設計した小笠原記念館の展示室。市が解体する方針を示している=唐津市西寺町

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