「マジでヒーローっす!」関西大学の社会人チーム、関大FC2008が優勝できたワケ

関西サッカーリーグの2023年を締めくくるKSLアストエンジカップ。10月からグループステージが開始された大会も、16日に決勝の日を迎えた。

大阪府の万博記念競技場で行われたファイナルに駒を進めたのは、兵庫県からJリーグを目指しているCento Cuore HARIMAと、関西大学の社会人チームである関大FC2008だった。

試合は前半のうちに動き、前半14分に関大FC2008が先制する。8番の打越彪乃介が前線でボールを収め、右サイドにつなぎ、キャプテンマークを巻く金原航大が折り返し。

それをペナルティエリア左に走り込んでいた谷遥翔が合わせ、ゴールへと押し込んだ。4回生二人のお膳立てを、1回生の谷が得点につなげた。

ゴールを決めた谷遥翔

Cento Cuore HARIMAはサイドからのクロスや鵜飼亮多のロングスローを中心に攻め込み、クリアのこぼれ球をミドルシュートに持ち込む場面が多かったものの、なかなか関大FC2008の守備を破壊できず。

逆に53分には関大FC2008の打越彪乃介が前線のプレスでボールを奪い、そのまま自らシュートを放って追加点。スコアは0-2となった。

打越彪乃介

しかしながら、2点差になってからついにCento Cuore HARIMAが反撃に成功し始める。54分には鵜飼のロングスローからの混戦で村上京太郎がゴールを決め、1点差に詰め寄った。

さらに82分には再び鵜飼のロングスローから押し込み、こぼれ球を右サイドからクロス。ファーポストで久保田駿斗が折り返し、途中出場の平谷成矢が合わせて同点ゴールをゲットする。

準決勝に続いて2試合連続ゴールの平谷選手

関大FC2008が2点を先行し、それからCento Cuore HARIMAが2点を奪い返すというスリリングな展開で、試合はPK戦へと持ち込まれることになった。

そして迎えたPK戦では先行の関大FC2008、後攻のCento Cuore HARIMAが1人目をお互いに成功するスタート。

続いて関大FCの2人目となった河岡輝星が蹴ったシュートは、Cento Cuore HARIMAのGK太田航生に弾かれて枠の外へ。

ところがCento Cuore HARIMAの2人目高瀬廉のシュートも関大FC2008のGK吉岡凛太郎に弾かれ、両者ともに譲らない展開となった。

さらに5人目まで両チームとも成功を続けたあと、決着がついたのは6人目だった。関大FC2008の久保敬太がシュートを決めると、Cento Cuore HARIMAの榎木怜が枠の上へと外してしまったのだ。

その結果、関大FC2008がPK戦5-4というスコアでCento Cuore HARIMAを撃破し、KSLアストエンジカップを制覇することに成功した。

「自分が止めて勝てるという自信があった」

関大FC2008の守護神としてPK戦の勝利に大きく貢献したGK吉岡凛太郎は、試合後のインタビューで以下のように話した。

――今日はヒーローでしょう?

マジでヒーローっすよ!試合をやる前から、「PK戦になったら絶対自分が止めて勝てる」という自信があったんで。なんかもう、その通りになって本当に良かったと思います。

――二人目のときは相手も止めて、そして吉岡選手も止めて。

こちらが外してしまったんで、止めなあかんな…という気持ちもあったんですけど、何もプレッシャー感じず、自信を持ってできたかなと思います。

――3人目のキッカーだった宮武選手にキャプテンマークを渡されそうになっていましたが

宮武選手のキャプテンマークを断るGK吉岡凛太郎選手

あれは…よくわからなかったんですけど、巻くのも面倒くさかったんで「いや、もう大丈夫です」と(笑)。

――4年間の大学サッカーを振り返ると?

最後の1年、リーグ戦はあまり出られなかったんです。ただその中でも自分がどんな状況でも心折れずに自分のやるべきことをやり続けた結果、最後にこうやって結果が残せたのは本当に良かったです。

――最後は胴上げもされていましたね

いやもう、勝ってみんなで喜んで胴上げするというのがやりたくて、これまでサッカーを続けてきたので。最後にまた味わえて良かったかなと思います。

――おめでとうございます、ありがとうございました!

「今日はもう、楽しもうぜ」

そしてキャプテンとしてこの関大FC2008の中心となっていた金原航大は、4年間の集大成となったカップ戦を以下のように振り返った。

――なかなか経験できない、決勝戦という舞台でしたね

そうですね。自分も久しぶりの決勝戦だったので緊張はしたんですけど、部員にも後輩にも「今までありがとう」という気持ちで。「今日はもう楽しもうぜ」という感じで吹っ切れてみんながやれたんじゃないかと思います。

――関西大学の応援も素晴らしかったですね。4年生ということで最後は胴上げもされていました

素直に「感謝」したいです。これが関大の良さでもあるんですよね。最後はいい形で終われてよかったなと思います。新型コロナウイルスの影響もあって、全然応援がなかったころもあったので…嬉しかったです。胴上げされたのも初めてでした。これも本当に嬉しかったですね。

――改めて優勝のあとに4年間の大学サッカーを振り返ると?

辛いこともありましたけど、周りの人に助けられたサッカー人生でした。素晴らしいスポーツに関わることができてよかったな…と思います。

――その助けてくださった皆さん、応援してくださった方に一言いただけますか?

率直に「ありがとうございます」と伝えたいですね。やっぱり応援の力で勝てた試合かなと思いますし、いい応援があったからこそいいプレーができました。

この先も関大として強くなるために応援って大事だと思うんです。なのでこれからも頑張ってほしいなと感じていますし、そして「今日は本当にありがとうございました」と言いたいです。

――優勝おめでとうございます!お疲れ様でした

「もっと正確さを求めたい」

そして、1回生ながらこの試合の先制点を決めたFW谷遥翔は、勝利という結果を受けながらも自身の課題を口にしていた。

――自らもゴールを決めて優勝を勝ち取りましたね

大会の決勝で点を取れたのはすごく嬉しいんですけど、全体的なプレーで見れば課題が多く残ったので、嬉しい反面悔しさも感じる試合でした。

前でボールを収めたあと、中盤の選手に預けるパスがずれてしまったり、色々と小さなミスがありました。そういうことを無くせるように正確さをもっと求めて、この先やっていきたいと思います。

――このカップ戦では関大FC2008の成長が印象的でしたが、どんな変化が?

そうですね、自分も結構成長したなと思っています。チームもなんですけど、個人個人の選手が各々自分の成長を感じていて、それがチーム全体に広がった時に強くなったのかなと 。

――関西大学のすごい応援を受けながら先輩を胴上げで送れた気分は?

とにかく楽しかったです。またやりたいですね。

試合中もずっと応援の声がずっと聞こえていて、それが力になりました。非常に感謝しています。ありがとうございました。

――ありがとうございました。優勝おめでとうございます!

「チャンピオンになる気持ちを持ち続けてほしい」

関西大学サッカー部のコーチを務め、関大FC2008では監督としてチームを率いている後藤亮太氏は、試合後のインタビューで以下のように話していた。

――おめでとうございます。グループステージ3試合、決勝トーナメント3試合を振り返って?

グループステージもそうですし、決勝トーナメントも1つ 1つで簡単な試合がなくて、ギリギリの勝負をやらせてもらっ たと思います。ヒリヒリしながら、ドキドキしながら、楽しいカップ戦でした。

――このカップ戦を通して「関大が強かったな」という印象です。指導者なしでやった試合もあったと聞きましたが、選手にどんな変化を感じますか?

私はこのチームの専属ではないので、他に仕事があれば週末は選手だけで行ってもらう時もありました。

その中での変化と言えば、結局は「責任感が生まれる」ということですね。

週末だけではなく、平日も選手だけに任せる時も多くて、このカップ戦では迷惑をかけてしまったんです。ただ、それは選手たちにとってはいい成長に繋がったのかなと思います。

――このカップ戦での優勝を、今後どんなことに繋げてほしいですか?

タイトルを獲るというのはやはり色々な要素が必要になります。ただ強い気持ちがあれば取れるわけでもなく、運も必要です。もちろん実力もないとダメです。

「チャンピオンになる」というところを目指す気持ちを、常日頃から持って欲しいですね。この成功体験を糧にして、みんなにはこれからも進んでいってほしいなと思います。

――最後は胴上げもされていましたね

胴上げされた経験は…監督になってから初めてになるんですけど、やっぱり嬉しいですね。ただ、本当に頑張ったのは選手たちなので、自分よりはできればみんなを褒め称えてあげたいです。

――優勝おめでとうございます!お疲れ様でした

4回生最後の舞台となったKSLアストエンジカップで優勝を果たした関大FC2008。関西サッカーリーグでは7位で2部降格を喫したものの、学生チームの常として日が立つごとに強さを増していった印象だ。

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来季はこれを経験した下級生が、関西大学のトップチームやこの関大FC2008にその経験をもたらし、さらに強くなっていくかもしれない。来季の関西大学にも注目したいところだ。

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