インフルエンザの小児向け治療薬の不足が深刻化 福井県内、やむなく処方制限の薬局も

「欠品中」や「欠品予定」の付箋が貼られた医薬品棚=11月、福井県福井市和田中3丁目のエンゼル調剤薬局本店

 福井県内の医療機関や薬局で、インフルエンザの小児向け治療薬やせき止め、たん切り薬などの不足が深刻化している。ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの不祥事を背景にした供給減に、インフルエンザの全国的な流行による需要の高まりが追い打ちをかけている状況。現場では処方を制限したり代替薬を使用したりするなどして急場をしのいでいる。

 県こども急患センター(福井市城東4丁目)には日曜の今月10日、通常の3倍近い277人が受診した。県内のインフルエンザ感染者数は10月以降増加傾向が続き、県は今月13日に「警報」を発令した。

 流行が拡大する中、同センターは今月から、インフルエンザ治療薬「タミフル」の小児向けドライシロップの処方を、原則として体重15キロ未満の乳幼児に限定している。対象外の子どもにはカプセルタイプの薬から粉を取り出し、乳糖を混ぜ、濃度調整したものを処方している。解熱剤「カロナール」のドライシロップも不足しており、体重20キロ以上の子どもには錠剤を砕き、濃度を調整して処方しているという。

 県薬剤師会急患センター委員会の村瀬英樹委員長によると、県こども急患センターには現在、1本で平均2人分の調剤が可能なタミフルドライシロップが毎週最大10本程度入ってくるが、「追加で欲しくてもこれ以上回ってこない状況。全く薬がないわけではないが、患者数に対して供給が追い付いていない」と話す。

 インフルエンザの流行に伴い、タミフルドライシロップの在庫が全国的に逼迫(ひっぱく)しているとして厚生労働省は11月8日、各都道府県などを通じ、薬局などに過剰な発注を控えることや地域内での融通に協力を依頼する文書を出した。

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 県内で12店舗展開するエンゼル調剤薬局の本店(福井市和田中3丁目)では、医薬品棚の至る所に「欠品中」や「欠品予定」と書かれた付箋が貼られている。特にせき止め、たん切り薬などが不足しており、医療機関と調整の上、必要最小限の分量を処方したり、同じ成分の代替薬を使ったりしている。後発薬から先発医薬品に切り替える場合もあるという。

 同店に医薬品を供給する卸売業者の担当者は「3年ほど前からいろんな薬が取り合いになっている状況。国が決める薬価が安い一方で原料は高く、メーカー側が採算が合わずに製造をやめる問題もある」と指摘する。同店の薬剤師は「患者さんに薬がないと言うのが一番つらい。一日でも早く安定供給をお願いしたい」と話す。

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