国内唯一「整形靴科」四半世紀で幕 河合美智子さんもモデルで協力 神戸医療福祉専門学校三田校、定員割れ続く

こだわりを込めてつくった整形靴を見つめる学生たち=三田市福島

 国内で唯一、整形靴を専門に学べる神戸医療福祉専門学校三田校(兵庫県三田市福島)の整形靴科が、学生数減少のため本年度で幕を閉じる。最後の学年となった2年生17人が集大成の整形靴製作に取り組み、右半身にまひがある俳優の河合美智子さん(55)=豊岡市=もモデルとして協力した。(尾仲由莉)

 ひもを編み上げたレースアップシューズや、カラフルなブーツ。どれも映画に出てきそうなおしゃれな見た目だが、実は足にまひや変形がある人に合わせたオーダーメードの「整形靴」。ドイツやフランスなどヨーロッパの多くの国では、「マイスター」など整形靴の国家資格がある。

 同校は1999年、2年制の整形靴科を開設した。2020年度までは毎年30人前後の入学者数を維持していたが、新型コロナウイルス禍で40人の定員の半数を切る状態が続いた。4年制の義肢装具士科などと違い、日本には整形靴に関する国家資格がないため、就職を不安視する声もあったという。

 整形靴科として最後の整形靴製作は8月末に始まり、オーストリア出身の整形靴マイスター、エドワルド・ヘルプストさん(58)が指導に加わった。

 9月に河合さんらモデルの症状や歩き方を把握して足型を取る「型取り」を行い、10月には木型が合っているかを透明なプラスチック製の仮靴で合わせた。そして今月11日、完成した靴を履いてもらい、インソール(中敷き)などをミリ単位で調整する「適合」の実習で締めくくった。

 河合さんの場合、右に傾いてしまう右足を真っすぐ地面に下ろせるように、右足のインソールを右半分だけわずかに厚さを調整した。試着した河合さんは「すごくフィットしていて支えられているのに、軽い」と驚いていた。

 河合さんの要望を受けて赤と黒の個性的なシューズを製作した杉田那奈さん(20)は「この2年間で作った5足で一番良いできに仕上がった。障害があっても、この靴が履けて良かったと思ってもらえるような靴をつくりたい」ときっぱり。クラシックなブーツをつくった庵憲人さん(28)も「足の構造を深く勉強するので、一般の人やアスリートの靴への応用もできると広めたい」と話していた。

 学生たちの整形靴は、来年2月16~18日に同校で開かれる「卒業製作展示会」で並ぶ。新型コロナウイルス禍で3年間はオンラインで実施してきたため、対面開催は4年ぶり。2月23~26日には大阪・梅田のギャラリー「4匹の猫」でも展示する。詳細は同展のインスタグラムで確認できる。

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