不法滞在の摘発強化 茨城県警 助長の雇用主も 外国人犯罪増加受け

茨城県警本部=水戸市笠原町

茨城県警は、不法滞在外国人の摘発を強化する。金属盗や薬物など外国人による犯罪が多発しているためで、雇用主に対する不法就労助長罪の取り締まりも強化。不法滞在者は働き口を探しながら犯罪に関与しているとみられ、県警は、他の犯罪を犯す前の段階で摘発を進めたい考えだ。

県警外事課によると、外国人の犯罪を巡っては2023年10月末現在、太陽光発電施設などでの金属盗の検挙97件のうち、不法滞在者による犯行は57件と半数を超えた。薬物犯罪の検挙では外国人割合が全体の2割に満たなかったが、うち不法滞在者の割合は6割近くに上っている。このほか、自動車盗や道交法違反(無免許)でも不法滞在者の検挙が相次いでいるという。

外国人による犯罪防止に向け、県警は、外国人を雇用するJAなどに身分確認の徹底などを働きかけるほか、外国人のコミュニティーと連携したパトロールや防犯講話の実施などこれまでの対策をさらに強化する。

中でも不法就労助長については、不法滞在者と知りながらも安価な労働力を求める雇用主の摘発を徹底したい考え。

入管難民法の不法就労助長罪は、日本で就労する資格のない外国人に就労させたり、不法就労を仲介したりする罪。認められていない業務などをさせていた場合も処罰の対象になり、違反者には3年以下の懲役や300万円以下の罰金、または両方が科せられる。

県内では不法就労の働き口の約7割は農業。作付けや収穫など人手が足りなくなる時季だけ不法滞在者を雇用しているとみられている。雇用主に対する取り締まり強化で、就労を希望する正規滞在者の確保にもつなげたい考えだ。

ただ、同課によると、不法就労助長罪の検挙件数は2019年以降、年間30件に満たないのが実情。就労希望者が不法滞在と認識しながら雇用した「故意性」を立証するのが難しいという。

不法滞在のインドネシア人2人を農産物生産会社で雇用したとして、不法就労助長の罪で公判中の男(49)は、年金事務所から2人の在留資格を確認するよう指導されながらも、雇用を継続したことが立件の決め手となった。男は19日、水戸地裁公判で「仕事が回らなくなるので雇い続けた。認識が甘かった」と話した。

県警は今後、不法滞在者の働き口と勤務実態の把握を徹底した上で、雇用者の違法性の認識も追及していく方針。

一瀬圭一本部長は20日の会見で「不法滞在者が犯罪を犯した後に検挙するのでは十分でない」と語り、入同法違反での摘発をさらに強化する方針を示した。

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