「保険料が年9万円以上あがった…」為替相場の影響が大きい【外貨建て保険】のリアル

2022年に引き続き、2023年も外国為替市場の対ドル円相場では、円安ドル高傾向が続いています。10月には約1年ぶりに一時1ドル=150円台を突破し、11月には2023年最安値を更新しました。このような背景から、ファイナンシャルプランナーの筆者の元には、為替相場の影響を大きく受ける外貨建て生命保険についての相談が増えています。

今回は、実際に相談を受けた2つのケースを元に、外貨建て生命保険への加入を検討する際に注意していただきたいポイントについて解説します。


ケース①営業担当に勧められて悩んでいる

最初のケースは、「生命保険の担当者から外貨建ての生命保険をすすめられたが、迷っている。どうしたらいいか?」というご相談です。相談者が検討していたのは、一時払いの終身保険でした。

外貨建ての一時払い終身保険は、円でいくらという形で一度にまとまった保険料を払い込み、保険金や解約返戻金の額は外貨(たとえば、ドル建ての場合はドル)で保証されているものが多くあります。この相談者が検討していたのも、同様のタイプでした。

提示された資料の返礼率が円建てのものと比べて良い数字だという点に魅力を感じているものの、現在の円安の為替相場が引っかかっているとのことでした。

一時払い商品の注意点

提案資料を確認したところ、5年後の返戻率は外貨ベースで120%以上となっており、たしかに魅力的な数字と言えるかもしれません。しかし、外貨建て生命保険の保険金の受け取りは基本的に外貨で行われるため、円での返戻率は確約されていません。つまり、元本の保証がないということです。

さらに円安の場合、同じ商品で同じ保険金額の場合でも円高の時と比べて円で払い込む保険料は高くなります。このように、一時払いはそのときの為替相場の影響を大きく受けてしまうため、円安の状況下ではあまりおすすめできません。

一時払いのように一度に大きな保険料を払い込むのではなく、毎月または毎年といったように長期間コツコツと保険料を払い込むことで、為替リスクを抑える方法もあります。しかしながら、毎月払いの場合でも、次のケースのような問題が考えられるため注意が必要です。

ケース②加入したものの支払いが厳しい

2つめのケースは、数年前に外貨建ての生命保険に加入した方からのご相談です。円安が進むにつれて月々の支払いが増えてしまい、高額な保険料が家計を圧迫して困っているとのことでした。

相談者の加入していた商品は、毎月の保険料が外貨ベースで決まっており、円での支払い金額が変動するタイプのものでした。加入時には毎月2万円程度だった保険料は、円安が進んだことで、現在は2万8000円前後になっています。年間で考えると、9万円以上の負担増となります。このケースのような相談は、最近非常に増えています。

保険料変動のリスク

たしかに、ほんの3年前まで100円台だった円が、急に50円前後も値上がりするなんて数年前には予想できなかったかもしれません。しかし、保険料が為替によって変動するタイプの保険は、加入前に為替リスクについてしっかりと確認しておく必要があります。

お伝えしたように外貨建ての保険は円安になると負担する保険料は上がります。ただ、円安になればその分受け取る保険金や解約返戻金も増えるため、デメリットばかりではありません。しかし、保険に加入してからの期間が短い場合、払込保険料の総額より解約返戻金額が低いことも考えられます。そのため、どのくらいの円安になったらどういった戦略を取るかを、あらかじめ考えておく必要があるのです。

厳しい言い方になりますが、この相談者の場合、加入前にそこまで考えが至っていなかったことが問題でした。そこで、今後の家計収支をふまえてライフプランの見直しを行い、無理せず払えるところまで保険を減額するか、思い切って解約することを提案しました。

保険加入の際は目的を明確に

生命保険の相談を受けた際には、まず保険加入の目的をお尋ねします。今回の2つのケースに共通している問題点は、加入の目的があいまいであったという点です。どちらも営業担当者にすすめられて「なんとなく良さそうだから」という理由で、加入の検討や加入したことが原因でした。

誤解しないでいただきたいのが、外貨建て保険に入ってはいけないと言っているのではありません。たとえば、将来子どもが留学する予定があるなど外貨を使う明確な目的がある場合、外貨建て保険はおすすめです。

外貨建ての生命保険に限ったことではありませんが、保険加入の際は自身のライフプランに合致した内容になっていることが大切です。生命保険の保険料は長い人生において、トータルで考えると非常に高額な負担となります。営業担当にすすめられたからと受け身のままではなく、自分が何のために保険加入を検討しているのか、目的を明確にし、自分にとっての最適解を考えることが必要です。

NISAなど保険以外の選択も

加入目的を明確にした上で保険加入を考えると同時に、もうひとつ大切にしていただきたいのが広い視野を持つことです。ケース①の相談者は、いくつかの保険会社から資料を取り寄せて比較検討していたものの、保険以外の選択肢を考えていませんでした。

生命保険の主たる目的は万が一の場合に備えての保障です。しかし、ケース①の相談者の場合、万が一の保証は必要としておらず、資産運用が目的とのことでした。資産形成の選択肢は、NISAやiDeCoなどといった税制面で優遇のある選択肢を含め、他にも色々と考えられます。この相談者は、ライフプランを作成し、改めていつどこで資産が必要かを考え直しました。検討の結果、外貨建ての生命保険ではなくNISAを活用して積立投資を始めることになりました。

保険に限らず金融商品選択の際には、メリット・デメリットの両面から比較検討するとともに、「目的はなんなのか?」「ライフプランに合っているか?」といったことを、今一度自分自身に問いかけてみることをおすすめします。

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