知事公舎で文化体験を 検討委が活用方針まとめる アドバイザーの隈研吾氏、茶と禅「他にない武器」

利活用方針がまとまった知事公舎=3月、金沢市広坂1丁目

 金沢市広坂1丁目の知事公舎の利活用策を巡り、有識者らで作る県の検討委員会は21日、「茶道などの高付加価値な文化体験ができる場とする」といった基本方針をまとめた。馳浩知事はこの方向性に沿って、来年度当初予算案に基本構想策定費を計上する方針を示した。近隣の鈴木大拙館との連携も提案され、総合アドバイザーで建築家の隈研吾氏は「茶道と禅は文化的に深くつながっている。他の都市にはない武器になる」と賛同した。

  ●日本文化発信の場

 金沢市のしいのき迎賓館で開かれた会合では、基本的な考え方として▽複数の歴史的建造物と趣のある庭が融合した「庭屋一如(ていおくいちにょ)」の空間▽県民に開放された憩いの空間▽回遊性、ブランド向上の一翼を担う空間▽同市との連携―も決めた。

 オンラインで初めて参加した隈氏は、兼六園周辺文化の森エリアを含めた一帯を「日本文化を発信する場所になる」と評価。その上で、全国的に期間限定のイベント(ポップアップ)会場が不足していると説明し、「ポップアップの場になれば世界中が注目する。文化的な価値を世界に発信できる」と述べ、貸しスペースとしての利用も提案した。

 公舎に隣接する県指定有形文化財の旧城南荘(旧横山邸)などと連動した情報発信や、夜間のライトアップの演出も重要になると強調した。

 意見交換では、砂塚隆広金沢経済同友会代表幹事が鈴木大拙館が近隣にあることから、茶道と禅の文化を合わせて発信することを促した。庭園の価値をより深掘りして物語性を打ち出すことや、公舎の横を流れる辰巳用水の活用を検討することも求めた。

 浦淳趣都金澤理事長は「伝統や格式にとらわれずに本物の文化を提供する場とすべきだ」とした。県民や観光客が気軽に茶道を体験できるよう、作法を指導する教室の開催を提案した。新保博之金沢市副市長は、市が旧横山邸にあった茶室「一種庵(いっしゅあん)」の復元を検討していると説明した。

 県側は、知事公舎の比較的新しい居住部分や、隣接する副知事公舎などを撤去して新たな交流スペースや茶室を設け、園路でつなげてエリア全体を一体化する案を提示した。隣接する金沢21世紀美術館との間を行き来しやすくするよう、辰巳用水に橋を掛けるアイデアも出された。

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