常陽の安全対策、了承 茨城県原子力対策委 県は年度内に「事前了解」判断

高速実験炉「常陽」の安全対策を議論した県原子力安全対策委員会=水戸市大工町

日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の運転再開に向けた安全対策について、茨城県原子力安全対策委員会は21日、「重大な問題はない」と評価し、了承した。県は工事の「事前了解」について、年度内に判断する方針を明らかにした。

常陽は7月、原子力規制委員会の新規制基準の適合審査に合格した。一方、運転再開に必要な安全対策工事の開始には、原子力安全協定に基づき、県と大洗町の事前了解が必要となる。

県は独自に安全性を判断するため、原子力の専門家で構成する安全対策委員会と、原子力関係市町村の首長や県議、有識者でつくる県原子力審議会の2機関で審議。その上で、隣接の鉾田、水戸、ひたちなか、茨城4市町から意見を聴き、事前了解を判断する。

対策委は水戸市内で開かれ、前回会合に続き、安全対策の妥当性を審議した。放射性物質が放出される事故について、機構側は誤操作による制御棒の引き抜きを防ぐ装置を設けるなどの対策を説明した。

実験炉に冷却剤として使うナトリウムによる大規模火災など、設計基準を超える事故については、破損した格納容器を覆うシートや放水で放射性物質の拡散を抑えるほか、特殊な化学消火剤を遠隔散布する設備を備えるとした。

終了後、東大大学院教授の古田一雄委員長は「前回の審議と合わせ、適切に対応している」と評価した。機構には県民への十分な説明を求めた。原子力機構大洗研究所の根岸仁所長は「県などの理解と事前了解を得て、安全に工事を進めていきたい」と述べた。

県原子力安全対策課の担当者は、事前了解について「先送りする考えはない。着実に判断に向けた手続きを進める」とした。

常陽は国内唯一の高速炉で、発電設備はない。廃炉になった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の前段階に位置付けられる研究施設。1977年に運転を始め、実験装置のトラブルで2007年から運転を停止している。

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