社説:ダイハツの不正 トヨタの責任も大きい

 これほど大規模な不正を長年続けてきた組織のずさんさに、憤りと恐ろしさを感じる。親会社のトヨタ自動車を含め、消費者の信頼は大きく損なわれたといえよう。

 ダイハツ工業の品質不正を巡り、弁護士らの第三者委員会が調査報告書を公表した。不正は30年以上前からで、車両はトヨタや他ブランドを含め64車種に及ぶ。ダイハツは全車を出荷停止とし、奥平総一郎社長が謝罪した。

 国土交通省はきのう、ダイハツ本社に立ち入り検査に入った。道路運送車両法に基づく行政処分を検討するという。京都や滋賀にも工場を持つだけに影響は大きい。

 ダイハツは今年4月、内部通報で自動車の側面衝突試験に関して不正を確認したと発表した、設置した第三者委が、資料の精査や147人の聴き取りを行った。

 調査によると、不正は社内の認証試験で行われ、最も古いものは1989年だった。エアバッグの衝突試験でタイマーにより自動作動させるといったデータの捏造(ねつぞう)や改ざんなど、新たに25項目で174件の不正を確認した。

 対象車種にはマツダやスバルから委託されたOEM(相手先ブランドによる生産)も含む。関連事故は把握していないというが、リコールなどの対応が急がれよう。

 低コストで短期開発の自動車を「ダイハツらしさ」とする経営方針の下、調査は不正の背景として、現場が「認証試験は合格して当たり前」という圧力にさらされていたと指摘。特に10年ほど前から過度に短い開発期間になり、不正が急増した。管理職による指示は確認できなかったという。

 命に関わる安全性に目を向けず、利益拡大に走った経営陣の責任は極めて重い。事実上、組織ぐるみになっていなかったか。国交省は十分に調査してもらいたい。

 深刻なのは日本を代表する企業、トヨタグループで不正が続いていることだ。1998年に傘下に入ったダイハツ同様、2001年に子会社になった日野自動車も昨年、燃費性能の認証試験でデータ改ざんが20年以上続いていたと判明。3月には豊田自動織機でも排ガスを巡る不正が露呈した。

 グループ随所に「もの言えぬ」風土がないか。トヨタは副社長が陳謝したが、グループを挙げて統治改革に取り組むべきだ。人命を預かる乗り物をつくる責任を、改めて自覚せねばならない。

 国交省には、企業に委ねる認証試験が「お手盛り」になっていないか、再点検を求めたい。

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