12月16日からの1週間で最も読まれたコンテンツは、子ども期の性暴力被害について取材した全3回の連載「裁かれぬ性犯罪」でした。
45年もの沈黙を破り、59歳女性が10代の頃に少年院で受けた過酷な被害の記憶を語っています。他人の目が届かない、逃げ場のない空間で、どれだけ孤独で怖い思いをしたでしょうか。
旧ジャニーズ事務所創業者による性加害問題では、70年前の被害を告白した俳優の78歳男性のケースもありました。性暴力や性被害は時に「魂の殺人」や「時限爆弾」などと表現されます。
特に被害者が子どもの場合は、性的行為の認識が難しかったり、不安や恐怖を言語化・相談できなかったりします。時がたってその意味に気付き、何らかの出来事などを引き金にフラッシュバック。深刻なトラウマとなって、長期間にわたり人生に暗い影を落とします。
「1度死んだ昔の自分を供養し、抱きしめて生きている感じ」。かつて私が取材した30代の女性は、こう言葉を絞り出しました。
彼女は20年以上も前の小学校高学年の時に所属していたスポーツチームで、コーチから複数回レイプされた経験を打ち明けました。あの時なぜ逃げなかったのか。もっと知識と勇気があったら、相談できる人がいたら・・・。被害の記憶はふとした瞬間によみがえり、その怒りは加害者だけでなく、他の大人やその人自身に向きます。
人によってはそれが、自傷行為や取り返しのつかない自死につながることも。
冒頭の連載に支援者の立場からコメントしたNPO法人レジリエンスの中島幸子代表は、法整備の不十分さを指摘します。
NPO法人レジリエンス・中島幸子代表
「今年は、性犯罪の規定を大幅に見直す改正刑法が施行された。同意がない性行為に広く適用できるようになったほか、グルーミングを処罰する罪も新設された。一方、不同意性交等罪の時効は改正前より長くなったとはいえ15年、不同意わいせつ罪は12年だ。被害を訴えようと思っても間に合わないケースは後を絶たない。多くの性暴力が不問にされる課題はまだ残っている」
2022年1月に16~24歳の若年層を対象に実施された内閣府調査では、最も深刻だった経験として、28・2%が体を触られるといった身体接触、8・2%が性交を伴う被害を挙げました。性暴力は、私たちが想像する以上に身近なところで牙をむいています。
「派手で露出の多い服を着ていた方が悪い」
「抵抗すればよかったじゃないか」
「大げさに言っているだけで、よくあることだ」
性暴力を矮小(わいしょう)化し、被害者に責任を押しつける「神話」は今も、根強くはびこっています。被害者は性暴力によって心や体の深い傷を負い、人の尊厳を侵されるのに、社会はまだまだ加害に大らかです。
性別を問わない性被害の問題が大きくクローズアップされた年の瀬。南城市の古謝景春市長による元運転手の女性に対するセクハラ疑惑も持ち上がっています。
加害者はもちろん、傍観者を減らしていく報道を粘り強く続ける使命を感じています。
クリスマス間近となりました。24、25日の那覇は最高・最低気温ともに20度を超えない予報。スーパー寒がりな私は、厳重な重ね着が必須、なのはどうでもいいとして(^_^;)。皆さま、温かくしてお過ごしください。
すべての子どもたちに夢や希望のプレゼントが届きますように。今週のデジ編チョイスは、新垣綾子が担当しました。