全国初! 特殊詐欺防いで“ごほうび” 優遇受けられる「功労者証」交付 埼玉県警、事業者と連携

特殊詐欺水際防止功労者証と留守番電話設定者認定証のレプリカ(ぬいぐるみは関係ありません)

 特殊詐欺を防いで、特典をゲット―。埼玉県警が高齢者らから現金をだまし取るなどの卑劣な犯行を1件でも多く減らすべく、新たな取り組みを始めた。県内で事業を展開する12事業者と連携し、ATMなどで詐欺被害を水際で止めた一般人を対象に動物園やカラオケ店、温泉施設など191施設で利用料が無料になるなどの優遇を受けられる。県警によると、全国の警察で初の試みだという。

 例えば、犯人側と電話をしながら金融機関でATMを操作しようとしている高齢者に対して、現金を送る前に声をかけるなどして被害を未然で防いだ際、各警察署が感謝状の贈呈とともに「功労者証」を交付。協力事業者の施設に提示すると計3回まで好きなサービスが受けられる。動物園の入園料のほか温泉施設や美術館の入館料、カラオケ店のフリータイム室料、焼き肉店のドリンクバーなどが無料に。割引になるレジャー施設もある。金融機関の職員やコンビニエンスストア店員らは対象外。

 県警生活安全総務課によると、今年1~11月に県内で発生した特殊詐欺は1206件(前年同期比36件減)で被害額は27億7772万円(同1億7983万円増)。水際防止したのは1922件(同130件減)あったが、そのうち一般の人によるものは178件(同32件増)で、全体の9.3%にとどまる。多くは金融機関の職員やコンビニの店員で、こうした取り組みを通じて、被害に遭いそうな人を見つけたら積極的に声をかけてもらうことが狙いだ。

 また、県警は犯人側と直接話す機会を持たないように、高齢者には留守番電話の設定を呼びかけているが、これに関連して、県内居住の65歳以上を対象に「留守番電話設定テスト」の参加希望者を募集している。応募者の中から無作為に選んだ人の自宅に県警から2回電話し、いずれも留守番電話設定になっていたら「認定証」を発行。対象施設で示すことで入場料無料や割引の特典を1回受けることができる。今月18日時点で27人の申し込みがあったという。

 11月に県警本部で行われた協力事業者証交付式で同課の中出功課長は「多くの事業者に賛同していただいたことに感謝したい。皆さんと協力して県民の詐欺被害を減らしていきたい」と決意を述べた。

 事業連携している温泉道場では昨年9月、ときがわ町の「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」でプロ野球独立リーグ埼玉武蔵ヒートベアーズの選手らが参加し、特殊詐欺被害防止メッセージを書いたヒノキ板を露天風呂に浮かべる啓発イベントを県警と開催した。今回は同社の5施設を対象に1人分の入館料が無料になる。同社ビジネスプロモーション本部・地域ビジネス部の松山浩隆部長は「利用者には高齢者も多いので、啓発に貢献できれば」と語った。

 協力事業者の施設や優遇特典の内容、留守番電話設定テストへの参加申し込みなど、詳細は県警のホームページで確認できる。

■「ピンときた」 第1号は川口の69歳女性

 特殊詐欺の被害を未然に防いだとして、浦和署は22日、介護ヘルパーの竹中恵子さん(69)=川口市=に感謝状を贈呈した。県警が県内12の協力事業者と連携した抑止対策で、詐欺被害を水際で止めた一般人が対象施設で特典を受けられる取り組みを11月から始めて以降、竹中さんが記念すべき“第1号”となった。

 竹中さんは今月5日午後2時ごろ、さいたま市南区の金融機関で70代男性が携帯電話で通話しながらATMを操作していたのを不審に思い、声をかけて操作を中断させた。電話は市役所からの医療費の還付金名目。自身も同様にだまされそうになった経験があり「携帯電話、ATM、医療費」というフレーズで、「詐欺だ」とピンときたという。

 同署の橋本昭文署長から感謝状とともに、対象施設に提示すると計3回優遇が受けられる特殊詐欺水際防止功労者証を贈られた竹中さんは「第1号と聞いてびっくり。温泉に行ってみたい。今後も困っている人に声をかけたい」と笑顔を見せた。

浦和署の橋本昭文署長から感謝状と特殊詐欺水際防止功労者証を贈呈された竹中恵子さん(左)=22日、浦和署

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