メメタァ - ライブハウスから未来を! 新宿ロフトでの『年末大感謝祭』開催を前に語るバンドの進化の行方

今年のメメタァは新宿ロフトでいろんなステージを見せてきたんだね

樋口:さっそく今年1年を皆で振り返っていこうかな。まずは2月の『メメフェス』はどうだった?

西沢成悟(Vo&G):今年が5回目の開催で、コロナ禍の制限はまだ完全に解除ではなかったけど、これまでで最大の入場者数にはなりました。

サンライズ太陽(Dr):誘うバンドの皆さんにも『メメフェス』が浸透してきている感じがあって、出演してくれるバンドも増えて、という感じでしたね。

樋口:そして6月には新宿ロフトでmeiyoくんとSAKANAMON、メメタァもこの並びに入っての3マン。それぞれが40分ステージだったけど、この日はどうだった?

成悟:すごく楽しかったです。ライブハウスで見ていて、自分的には思い入れもある人たちと一緒にライブハウスでできて、アンコールではセッションもあって。自分ももっと頑張ろう、っていう気持ちにもなりました。

カワギシタカユキ(B):3マンっていうのはやっぱり特別なことで。その上で、そもそも新宿ロフトは憧れの場所っていうのもあって。音楽をやってきて一つ、辿り着いた場所としてやっぱり特別です。音楽をやってて良かったなと思える1日でした。

工藤快斗(G):長尺で自信を持ってライブができるようになったし、この3マンでも自信を持ってステージに立って戦えるようになったな、と。もともとは別のバンドで頑張ってたけど今はメメタァでやっていて、それで、俺たちここまで来たんだな…っていうのをすごく思いました。

樋口:いちミュージシャンとして、同じ目線に立って良いんだなっていうのも確認できた1日だった気がするな。

太陽:そうですね。樋口さんからお話をいただいたとき、メンバー皆で“やったぁ!”ってガッツポーズしましたもん!(一同笑) 僕らは5年ぐらい前に(下北沢)近松でSAKANAMONとThe Floorの2マンライブのオープニングアクトで出る、っていうことはあったんですけど。

樋口:そっか〜、同じステージに立っててもオープニングアクトとは全然違うもんね! ブッキングした側から言うとこの3組は、meiyoくんの持ってるポップさとメメタァが持ってるポップ、SAKANAMONが作ってるポップな感じが楽曲を聴いたときにイコールと言うか、私の中では繋がるところがあって。その上で、自分らしさも出せて仲良くもなれるだろうな、この日は良い1日になるだろうなっていう確信があったの。この日を作れたことは私にとってもやり甲斐があったし、ブッキングをやってきて良かったな、って思ってる。打ち上げも皆、楽しそうに過ごされてたのも印象に残ってるしね。

太陽:その後に今年は僕ら、初めての夏フェスに結構出させてもらったんですよ。その3マンからすごく、流れが良かった感じがしてますね。“戦えるんだ!”っていう気持ちを持って夏フェスに挑むことができたので。

樋口:そうだったんだね。それから次が、メメタァのツアー初日で9月にKALMAとのツーマンか。これまでも新宿ロフトにたくさん出演してもらってるけど、今年はただ30分尺で、とかではなくいろんな形でのライブをしてきたんだね。

成悟:そうですね。そしてその都度、対談もさせてもらいました(笑)。

メメタァのライブで、ダイブが!!!

樋口:『メメフェス』、3マン、ツーマンと来て『年末大感謝祭』で、私自身の1年を振り返る上でもメメタァは外せないバンドの一つで、今年の締めくくりは皆と自由に話したいなと思って。KALMAとの対談で言ってたけど、最初に出会ったときにKALMAは高校生だったんだって?

成悟:そうなんですよ、それでちゃんと対バンしたのはあの日が初めてで。今までメメタァのライブでダイブとかが起きたことがなかったんですけど…。

樋口:(声を大にして)分かる! この日、ビックリしたもん! 『年末大感謝祭』もダイブ止めのスタッフがいるかも、とか言ったりしてるんだよ(笑)。

太陽:(ダイブが起こるのが)今年の夏フェスを過ぎたあたりからなんですよね。

カワギシ:ダイブ、起きるんだ!? って思ったもんね(笑)。

成悟:大阪のライブハウスに5年ぶりぐらいで深夜に出たんですけど、僕らの前までは結構ダイブをやる出演者で、僕らの出番のときにダイブキャッチのスタッフさんが一旦、休憩に入ったんですよ。ライブ始まって、あっ! って、すぐ戻ってきましたね(笑)。

太陽:今年はメメタァのライブも転換点で変わりましたね、お客さんの勢いとかも変わったし。

樋口:自分たちでも何か、変わったことってあったのかな?

成悟:ボーカルとしてもう少ししっかりしないと、俺が前に居続けないと、バンドを率いれないなと思って。4人でやっているバンドだけど、俺が引っ張ってるっていう感じをもう少し出したいなというのが今年、もしかしたら良い感じになったかもしれないですね。

太陽:俺は成悟のことが大好きでメメタァにも入ってるけど、後ろで叩いてても分かるんですよ。対バンしたバンドマンが今年増えて、MCにしても覚悟があるなと感じるようになったし、一人の人間としても成悟についていきたいって思わせることが増えたなと感じてますね。

カワギシ:いい意味で(成悟が)わがままになったなと思ってて。ちょっとずつ進化している感じを確かに今年は、すごく分かりやすく感じてました。本人には言ってなかったですけど。(太陽を見ながら)MCでちょいちょい、泣いてるもんね(笑)。

太陽:俺、今年は結構、泣いてる(一同笑)。

樋口:それは単に歳を重ねて涙もろくなってるからじゃないの?(笑)

カワギシ:俺たちのほうに刺さってるんじゃないか、っていう言葉を言ったりするときがあるもんね。

工藤:うん、それはあるね。個人的には俺は、(成悟は)変わってない思うっていう感覚で。“お前はもともと、こういうものを持ってんだから出してけよ!”っていうのが今年、できたんじゃないかなって思ってる。

カワギシ:あぁ、確かに。元の人間をさらけ出してきた感じなのかも!

成悟:うん、多少ね(一同笑)。「ブルースドライバー」って曲を今年5月に出したんですけど、この曲でダイブが起こるんですよ。前に、“最も個人的なことが最もクリエイティブなこと”って、映画『パラサイト』の(ポン・ジュノ)監督が言っていて。もっとプライベートで良いんだ、俺がどういう人間なのかとかどう思ってるかというほうが、(楽曲を)聴く意味があるんだろうなと。そういうマインドもありましたね。

樋口:今の成悟くんの話を聞いて、フジファブリックが『CHRONICLE』(2009年)を出したときのことを思い出したよ。すごく赤裸々にさらけ出していて。

成悟:そうですよね、僕も好きですけど、あのアルバムは確かにすごかったですよね。

樋口:そして名盤として今も残ってるしね。でもメメタァはこの1年を振り返って、全体的に良い1年だったんじゃないのかな?

成悟:そうですね、良い1年でした。濃い〜です!

カワギシ:数年前は出られなかったイベントに出たり、できなかったことが一気に、ガッ! とできて。

太陽:だからコロナが明けたんだっていうこともようやく実感できたし、コロナがあっても続けてきて良かったな、って思いましたね。

成悟:出たいイベントに出たり一緒に演りたい人とステージに立ったりできたけど、でもそれで、さらに挑戦したいことや戦わなきゃいけないっていう姿勢でライブをしなくちゃいけないっていう瞬間がすごく多くて。前に進んでるんですけどさらに超えていかなくちゃいけないものとか、もっと頑張らなくちゃって思うことも多かったですね。

樋口:でもそれは、これまでに比べて課題だったり目標のレベルと言うか、自分たちに求めるものが上がってるってことだよね? 去年の対談のときと比べても、話してる内容の質が上がって会話が変わっている感じがするよ!

成悟:前、樋口さんに“ヒット曲を作りなさい”って言われたことがあって。

樋口:それは賛否両論あると思うんだけどね。

成悟:出たかったフェスとかライブに出て、ヒット曲があるというのはこういうことか…って。より、自分の中で意味が分かるようになって、ヒット曲があるって強いな、って。

太陽:それ、3マンのときに「なにやってもうまくいかない」(meiyo/2021年)のお客さんの盛り上がりを見たときにもすごく思いました。

樋口:それはお客さんも絶対に(ライブで)この曲を演って欲しい、って求められる1曲があるってことだからね。そういう曲が1曲ある、しかもそれは今や世界でも聴いてもらえるわけだからね。

成悟:今まではメンバー4人、まず“良いライブをしよう”って、良いライブをするために曲を作るっていう視点だったのが、“どうやってこの曲を聴いてもらうか”っていう別の視点ができた1年でもありましたね。

「〜ライブハウスから未来を〜」のサブタイトルに込めた意味

樋口:今年のメメタァとの『年末大感謝祭』で、私が声をかけた出演者は10代後半から20代前半の若い世代で、しかもロック系をセレクトして。メメタァとだからこそハマる面白いラインナップで、26日の『年末大感謝祭』と27日にメメタァと共催する『年末大感謝祭』で棲み分けができたと思ってる。

太陽:でもロックバンドだけじゃなくて、メメタァにも合うようなポップスもいたり。

樋口:フレッシュだけでもなくて、クレ山(CRAZY WEST MOUNTAIN)のようなメメタァとも付き合いが長いバンドもいたり。私に出せないカラーはメメタァのカラーで入れてくれて、今年は特に、非常にバランスが良いラインナップの1日にできた感じかな。お客さんにはチケット代を払って来てもらうわけだからちゃんと選んでもらえる1日にしたいと思ってるんだけど、選んでもらえるような1日が作れたんじゃないかなと思ってる。かつての『年末大感謝祭』にはたとえばマカロニえんぴつが出てて、今となっては“『年末大感謝祭』にも出てたんだよ!”って言えるし、この先に“メメタァと一緒にこんな日をやってたんだぞ!”って言えるように私も力を入れてやってるし、前のめりに楽しんでやっている日ではあるかな。打ち上げまで楽しみだしね(一同笑)。

太陽:今年のラインナップから、樋口さんはどんな印象を受けてます?

樋口:日本に限らず、グローバルな活動をしていきそうだなっていう雰囲気を感じるバンドが多いかな。SNSも日本限定のものじゃないからね、もちろん日本で頑張るっていうのもすごいことなんだけど、リプディサ(RIP DISHONOR)は(毎年春・夏に開催している)『TEEN'S MUSIC CAMP』にずっと出ていて来春から大学生になるんだって。

全員:おぉー!!

樋口:若い彼らなんかはもっと世界を見ていくかもしれないし、(受験もひと段落したとのことで)彼らは今回、出られることをすっごく喜んでたよ。

成悟:回数的にも一番出てくれてるバンドかもしれないし、今まではバーステージでのライブでしたよね?

樋口:そう! だから敢えてのチャレンジで、今回はホールでも良いかなって思って。

太陽:樋口さんとやり取りしてて知ってるはずなんですけど、いざ発表されたタイムテーブルを見ると“これ、面白いな!”って自分でも思えるイベントですよね。

樋口:メメタァにとっても刺激になると思うし、私の立場でも刺激があるし、出演される方にも楽しいとか面白いというのが共有できる日じゃないかな。改めてタイムテーブルを見てそう思うし、メメタァがアコースティックでウエルカムアクトみたいな感じも今年は良いし、最初から見に来てほしいよね。

太陽:アコースティックでツアーもやりたいぐらい、アコースティックもメチャクチャ好きなんですよ。

カワギシ:バーステージっていうのも結構、久しぶりだし楽しみだよね。

樋口:そんな今年は「〜ライブハウスから未来を〜」っていうサブタイトルだよね?

成悟:自分が付けたんですけど、コロナと戦ってるのがロックバンドとしての在り方みたいな時期がすごくあったし、ライブハウスもコロナとどう向き合うかというのが重要な課題だったと思うんですけど、その状況が解消されてお客さんが元に戻ってる部分もある。と同時に音楽の聴き方もすごく変わってきてる部分がある中で、僕らがライブハウスで出会ったように、ライブハウスを大事にしている人たち…ライブばっかりやってても、みたいに言う人もいるし(SNSを駆使する等)、他のことをやったほうが良いっていう意見もある。けど、それでもやっぱり、ライブをやっているバンドっていうのがたくさんいて。俺より若くてもカッコいいって思えるバンドもいるし、そういう人たちと、ライブハウスっていう所から未来を作っていきたい。ライブハウスを大事に、新宿ロフトじゃなくても出演者それぞれがホームに感じているライブハウスがある、そんなバンドを呼んだつもりです。なので、このタイトルを付けました。

樋口:これまでのサブタイトルが繋がってきてストーリーがあるし、言葉も前向きにステップアップしてる感があるよね。

太陽:じゃあ来年は“ライブハウスから世界へ”にしましょう!(一同笑)

樋口:年末に『年末大感謝祭』をやって年明けに『メメフェス』、っていう流れもできてきてるよね。私も当たり前のように年末はメメタァと一緒にやると思ってるから、もう来年末の日程も(仮で)押さえたもん(一同笑)。『メメフェス』も、メメタァの皆の人柄もありながら毎年コツコツ積み重ねてきてる成果だよね。せっかく『メメフェス』っていうサーキットを立ち上げてやってきてるから、いつかサーキットにも関わりたいなって私は思ってる。

全員:おぉお〜!

樋口:来年が新宿ロフトがこの場所に移転して25周年なんだけど、たとえばこれは私の理想として30周年のときにはZepp Shinjukuも入れてやったりとか、吉本興業(東京本部)が新宿にあるから吉本さんも交えていろんなジャンルでやるとか。若いときに新宿マーブルからスタートしたメメタァが新宿ロフトを巻き込んで、さらに歌舞伎町一帯をも巻き込んで、みたいなストーリーがあったら良いなって思うし、もしそんなことができたら本にもなるよ(一同笑)。言うのはタダだし、そういう楽しみも持ちながらバンドを続けていったほうが良いからね!

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