社説:国の来年度予算案 「借金依存」に不安が膨らむ

 国民生活の厳しさと将来不安をよそに、この国を支える財政は緩んだままでいいのか。

 政府が決定した2024年度予算案は、一般会計の歳出総額を112兆円とした。

 23年度まで11年連続の過去最大から減額に転じたものの、過大計上と批判の強い予備費を4兆円減らしたのを除くと実質増という巨額予算が続く。

 高齢化に伴う社会保障費や、強化を進める防衛費が過去最大を更新し続け、税収では賄えずに3割を国債発行で補う「借金頼み」のいびつさだ。

 岸田文雄首相が掲げた防衛、少子化対策のための新たな財源や歳出改革は明確な形が見えず、新型コロナウイルス対策で膨張した財政を「平時に戻す」方針から程遠い。

 目をむくのが防衛費の伸び方だ。7兆9千億円に上り、過去最大だった23年度から1兆1千億円もの増加である。

 27年度までの5年間に総額43兆円を投じる防衛力強化の2年目で、他国を攻撃できる反撃能力の手段となる長射程ミサイルの取得費などが大きい。1年前倒しして25年度の配備へ前のめりである。

 一方、賄うための防衛増税は開始時期の議論が再び先送りされた。財源が定まらぬまま巨額装備の購入が先走る形だ。

 円安で調達価格が上昇する中、首相は43兆円の枠内を堅持するとした一方、何を見直すのかは明確でない。「必要な防衛力を積み上げた」として根拠の説明を避けてきた中身が問われている。身の丈を超え、軍拡競争を招かぬか。専守防衛の根本から、国の守りの在り方を国会で徹底議論すべきだろう。

 最大費目の社会保障は、6年に1度の医療、介護、障害福祉の3報酬の同時改定で、いずれも人件費のプラス分を織り込んだ。焦眉の人手確保に向け、現場の処遇改善が急がれる。

 「薬価」を引き下げ、医療全体はマイナス改定とした。政府は支出改革で少子化対策費の捻出を掲げるが、高齢化で社会保障費が8500億円増える中、財源は見通せない。小手先でなく、負担と給付のバランスを図る丁寧な議論が必要だ。

 物価高を背景に過去最大の70兆円に迫る税収でも足りず、新たに約35兆円の国債を発行する。残高1千兆円超に積み上がった国債の返済と利払いは計27兆円に上る。想定金利の引き上げで1兆7千億円増える。金利の上昇局面で大きな財政リスクとなっているのは見過ごせない。

 首相は「変化の流れをつかみとるための予算」とし、賃上げを促す企業支援や教職員、保育士の処遇改善も盛り込んだ。

 だが、膨張した歳出を支えるための借金依存のつけは、多くの政策運営を圧迫し、負担増への国民の不安を高めている。持続可能な財政の健全化に向き合う具体策が欠かせない。

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