勇気をもらった寺尾さん死去…急激な寒さ到来、心臓病に要注意 激しい温度差はNG!医師が語る

先日、寺尾さんが亡くなったニュースを目にしました。大相撲の元関脇で、錣山親方として弟子を育てておられました。現役時代、それほど大きな体格ではなかったですが、激しい突っ張りで横綱千代の富士らに挑んでいった姿は忘れられません。学生の頃、勇気をいただいた力士でした。まだ60歳…本当に残念です。

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急激に寒くなってきました。この寒さとともに訪れてくる病気はたくさんあります。錣山親方の死因であるうっ血性心不全も急激に増悪するので要注意です。

インフルエンザなどのウィルス感染、細菌性肺炎、これらの病気も致命的になることもありますが、直接死亡原因に繋がる脳血管、心臓病にも要注意です。

うっ血性心不全とは、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患が原因となることが知られています。心臓を栄養している血管が細くなり、心臓に酸素が行き渡らなくなり、酷くなると心臓の一部が壊死することがあります。さらに、心臓弁膜症。心臓には4つの部屋があり、適正なルートで血液が流れます。その際に血液が逆流しないように弁がうまく機能しています。その弁が何らかの理由で壊れて、血液が逆流している状態を言います。そして、高血圧と心筋症の合計4つの疾患が原因となると言われています。

これらの疾患が増悪することにより、心臓のポンプ機能(血液を全身に送り出す機能)が低下して、肺や、肝臓や、腎臓、四肢などに血液がうっ滞して、様々な障害を起こしている状態をうっ血性心不全と言います。

症状は、呼吸困難、動悸、浮腫み、夜間の呼吸困難の増悪、尿量の減少体重増加などがあります。

治療としては、原因疾患の治療が優先されます。虚血性心疾患であれば、狭くなった血管を広げる、弁膜症であれば、うまく機能していない弁の取り換えをするなどです。錣山親方の場合、報道によりますと、ニトロを手放すことができなかったようですので、恐らく虚血性心疾患からのうっ血性心不全だったと推測されます。

これからの季節は屋内にいても、トイレ、脱衣所、お風呂などでは、温度差が激しく、そういった場所での出入りが急激に血圧を変動させ、死に直結することがあります。小医においても、リスクの高い方は、必ず、温風器などを使用して暖かくしてから、それらの場所に移動するようにお願いしています。

◆谷光利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。

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