裁判で手錠、腰縄姿はさらされていいのか 「無罪推定の原則に反する」滋賀弁護士会が研修会

法廷内での被告人の腰縄・手錠姿について問題点を話す川〓弁護士(大津市梅林1丁目・滋賀弁護士会館)

 滋賀弁護士会がこのほど、勾留中の被告が刑事裁判の入退廷時に手錠や腰縄を付けた姿をさらされる問題を考える研修会を大津市内で開いた。手錠や腰縄の使用中止を求めている日弁連の全国キャラバンの一環として実施した。弁護士らが裁判所への申し入れ活動や課題を報告し、意見を交わした。

 手錠・腰縄問題は、2014年に大阪地裁の公判で、手錠・腰縄姿では自分が犯罪者として映るとして被告が出頭拒否したことをきっかけに、18年、日弁連がプロジェクトチーム(PT)を発足させた。日弁連は19年に公表した意見書で、入退廷時の手錠・腰縄の使用について「必要最小限の身体拘束を超えた違法なもの」であり、個人の尊厳や無罪推定の権利をおろそかにしていると主張。手錠・腰縄姿をさらさないよう裁判所へ申し入れる活動を広げている。日弁連によると、申し入れ件数は20年12月から現在までで113件に達しているという。

 研修会で、日弁連のPTで委員を務める大阪弁護士会の川﨑真陽弁護士が、法廷内では原則拘束されない韓国やドイツ、アイルランドなどの海外事例を紹介。日本でも裁判所への申し入れが各地に広がる一方、「最近は申し出ても何も反応しない裁判官が多い」と指摘した。

 滋賀弁護士会の永芳明弁護士は、自身が弁護人を務めた事件で申し入れをしたケースを報告した。大津地裁で昨年5月に開かれた強盗致傷事件の公判で、永芳弁護士は、高齢になっている被告の母親らへの配慮から、被告の手錠・腰縄姿を法廷で見せないよう地裁に要請した。裁判長はこれに応じず、被告は手錠と腰縄を付けて入廷した。

 一方で、手錠と腰縄を外した後に親族を法廷に入れるよう提案し、こうすることで母親の目に触れることは避けられたという。

 永芳弁護士はこの対応について「一定の配慮はなされたが、無罪推定の原則に反する不十分な対応だ。誰の目にもさらされないようにすべき」と指摘する。

 

© 株式会社京都新聞社