ふるさと納税、全国1741市区町村の黒字と赤字を可視化 100億円以上黒字は6市町、最大赤字額は268億円

 ふるさと納税は、税控除の期限が迫る年末に寄付が集中する傾向がある。2008年度の制度導入後、寄付総額は年々増え、2022年度は全国で9654億円と1兆円に迫る規模になっている。福井新聞は22年度の寄付額などを基に全国1741市区町村の“収支”を地図上で色分けした。返礼品人気などで寄付が多い“黒字”と、控除による税収減が上回る“赤字”の自治体間の明暗が可視化された。

 総務省の「ふるさと納税に関する現況調査」を基に、各自治体の2022年度の寄付受入額と、23年度の住民税(市区町村民税)の控除額の差を、自治体の実質的な収支として計算した。

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 福井県内は16市町が黒字で、福井市だけが約2億7千万円の赤字だった。黒字額は敦賀市約86億2千万円、坂井市約13億5千万円、越前町約8億6千万円、越前市約8億5千万円、鯖江市約7億4千万円の順に多く、石川、富山を含めた北陸3県でみても上位5位を占めた。

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 敦賀市の黒字額は全国9位で、市によるとエビやカニなどの海産物の返礼品が人気という。福井市の担当者は「都市部などと同様に人口が多い自治体では総じて流出超過(赤字)になりやすい」とした上で、「今後、寄付額をより伸ばしていきたい。ポータルサイトを増やすなどの取り組みを行っている」と話す。

 一方、地方交付税の交付団体の場合、ふるさと納税による税収減の75%が地方交付税で国から補塡(ほてん)される仕組みで、福井市は23年度の控除額に対して約4億9千万円が補塡される。

 全国の市区町村計1741自治体をみると、約8割に当たる1369自治体が黒字、372自治体が赤字だった。黒字額100億円以上は6市町あり、北海道紋別市の約193億9千万円が最も多く、宮崎県都城市約193億7千万円、北海道根室市約175億8千万円などと続く。一方、赤字額は、横浜市約268億4千万円、大阪市約143億円、川崎市約114億9千万円などの順で、東京23区は全て赤字だった。

 ※収支の計算方法 総務省が毎年発表している「ふるさと納税に関する現況調査」を元に、2022年度の寄付受入額と、23年度の住民税(市町村民税)の控除額の差を、自治体の実質的な「収支」として計算した。

 ふるさと納税 応援したい自治体に寄付すると、上限額を超えなければ自己負担の2千円を除いた額が住民税などから差し引かれる。都市部に偏る財源を地方に移し活性化につなげる狙いで、2008年に始まった。創設時の08年度の寄付総額は約81億円だったが、高価な返礼品を呼び水とした自治体間の寄付獲得競争が過熱、19年6月から「返礼品は寄付額の30%以下の地場産品」とする基準を守る自治体だけが参加できる新制度に移行した。

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