ニセ電話詐欺 被害が過去最多 長崎・浦上署広報チーム「ピース」 手口を寸劇で記憶に残す

寸劇で犯人役を演じる署員たち=長崎市、住吉中央公園

 長崎県内でニセ電話詐欺の被害が深刻化している。県警によると、今年は11月末時点の認知件数が127件、被害総額は約2億8700万円に上り、いずれも2016年以降で過去最多。次々と変わる手口を寸劇で伝え、見る人の記憶に残そうと懸命に動く浦上署の広報チーム「ピース」を追った。

ニセ電話詐欺の長崎県内被害状況

 今月15日、長崎市住吉町の住吉中央公園。「『浦上デパートの田中』です。あなたのクレジットカードが不正に使われています」。デパート従業員役の署員が、高齢の女性宅に電話をかけ始めた。「銀行協会職員」を名乗る男も登場し、カードをだまし取ろうと言葉巧みに畳みかける。偶然、電話をかけてきた孫に女性が説明すると「それ、詐欺だよ」の一言。辛うじて難を逃れ、ほっとした女性の表情で幕を下ろす。
 10月に結成したピースは全署員が加入。数人でチームを組み、管内各所の防犯関連行事へ出向く。普段は頼もしい署員が、こわもての犯人役に様変わり。台本なしのアドリブの演技はプロ顔負けだ。「実際に聞いた被害者の話をそのまま演じているうちに力が入ってくる」。実体験が、迫真の演技の支えでもある。
 真剣な表情で見入っていたのは、浦上地区防犯協会員ら約50人。住吉町自治会長の吉田次郎さん(73)は「あやしい相手と長く話さないなど、常に注意することが大切」と話した。
 永尾俊之署長は「パソコンに警告画面が表示されたり、電話で銀行やATMに行くように指示されたりしたら詐欺。年末で人の動きが活発になるので、普段以上に気を付けて」と呼びかけた。
 県警生活安全企画課によると、劇団など各署独自の啓発活動の多くは、コロナ禍で中断。現在、22署のうち活動しているのはピースのみ。
 同課によると、11月の認知件数は8件、被害総額は約838万円。パソコンのサポート詐欺などの架空料金請求が最多の6件。

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