社説:京都府立高の改革 選択肢増やす多様な特色を

 京都府教育委員会は府立高の教育充実や、学校再編の指針となる「魅力ある府立高校づくり推進基本計画」をまとめた。

 府内の公立高は、志願先を自由に選べる単独選抜制が2014年度に全面導入されたことで、受験生から選ばれる側面が大きくなった。一定の年収以下の世帯の授業料が無償化された私立高と、生徒確保の競争も激しさを増している。

 こうした変化を踏まえ、府立高は一層の特色づくりと発信への取り組みが必要との認識が、計画の背景にあるようだ。

 学校ごとの特徴を打ち出す上で欠かせないのが、全体の8割を超える生徒が学ぶ普通科の見直しだろう。

 教育内容が画一的で個性に乏しいとの指摘は根強い。

 基本計画は、複合的な分野や地域課題などが学べる「新しい普通科」を府内の全5通学区にそれぞれ新設し、難関大志望者が多い「普通科系専門学科」も探究活動などのカリキュラムをさらに充実させるとしている。情報通信技術(ICT)教育や留学支援の強化など、さまざまな視点から独自性を高めることも考えられよう。

 高校の特色化においては「高大連携」も盛り込んだ。基本計画は、京都府立大の付属高の設置計画に言及しており、農林業系の学科がある農芸高(南丹市)と北桑田高(京都市右京区)が有力候補とされる。付属高には府立大への推薦枠が設定される見込みで、生徒の学びへの意欲につなげるという。

 不登校や発達障害、経済的な困難な事情を抱える生徒らの学びの場として、定時制や通信制の充実は不可欠だ。

 昼間定時制の新設校である清明(京都市北区)と清新(京丹後市)は、授業選択や通学時間帯の設定の幅が大きく、一定のニーズがある。多様な学びに対応する学習環境を積極的に提示してもらいたい。

 少子化の影響で避けて通れないとするのが、統廃合を含む学校再編の議論である。

 22年度の府内の中学3年生は1987年度の半分以下の約1万9千人にまで減っている。府立高数は48のまま、小規模化が進み、選択科目の多様化や生徒同士の切磋琢磨(せっさたくま)が難しい面があると現場から声が上がる。

 基本計画は、教育の質の維持には1学年当たり6~8クラスが必要だが、現状でそれを満たしていない学校が府全体で22校あるとしている。一方で交通事情や地域の活力を保つ観点から、一律の基準で再編はしない、とも明記した。

 小規模校は目が届きやすく、人間関係づくりなどで長所もある。一定授業のオンライン化やクラブ活動の合同化など先行する工夫は有効だろう。

 机上の数合わせでなく、各高校と地域が主体的に将来像を語り合う中で最適解を探りたい。

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