行政も、皆も諦めない…全国初「拉致被害者等の早期帰郷を望む条例」 田口八重子さんの出身地・川口で

川口市役所=埼玉県川口市青木

 埼玉県の川口市議会は12月定例会最終日の25日、拉致問題の啓発を推進する「川口市拉致被害者等の早期帰郷を望む条例」を全会一致で可決した。

 川口市は拉致被害者田口八重子さん=失踪当時(22)=の出身地。田口さんは東京都内で働いていた1978(昭和53)年に北朝鮮に拉致されている。

 議員提案の条例は「市は拉致問題等に関する市民の認識を深めるため、国と連携を図りつつ、拉致問題等に関する啓発を積極的に行うものとする」と市の役割を定義。具体的取り組みとして、市民の関心や認識を深め、早期解決の必要性に関する意識の高揚を図ることや、広域的な取り組みを行う場合には必要に応じて国、他の地方公共団体その他関係機関と協力して行う―などとしている。

 川口市には政府が拉致被害者として認定する田口さんのほか、北朝鮮による拉致の疑いが排除できない市関係の特定失踪者が4人おり、一日も早い救出が待ち望まれている。

 市議会事務局議事課によると、条例は県内初。全国では東京都足立区や江戸川区、新潟市で拉致問題解決に向けた啓発を推進する条例はあるが、拉致被害者の「早期帰郷」に言及した条例は全国初とみられるという。川口市としても拉致問題解決へ向けた市の役割を具体的に定めた条例は初めてという。議会運営委員長が同日、本会議に条例案を提出し、全市議が賛成。即日公布、施行された。

 条例案を取りまとめた「拉致問題を考える川口の会」代表の前原博孝市議(自民)は埼玉新聞の取材に「拉致被害者家族の高齢化が進んでおり、一日も早い解決が望まれる。行政が、皆が諦めず少しでも前に進めることが重要」と話した。

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