長崎市南部・マリンスポーツセンター28日閉館 中学生スイマー、練習拠点失う

地域スポーツや市民のにぎわいの拠点だったマリンスポーツセンター=長崎市江川町

 長崎県長崎市江川町の民間複合施設「マリンスポーツセンター」が28日に閉館する。市南部地域で唯一の水泳教室の閉鎖に伴い、将来を嘱望されている中学生スイマーが練習拠点を失う。「どうすれば続けられるのか」。受け入れ先探しへの行政の支援はなく、地域で競技を続けるかどうか、岐路に立たされている。

 香焼町に住む県立長崎東中2年の島村香春さん(14)。3歳から同センターの教室に通い始め、小学5年生で通常コースの検定をすべてクリア。選手を目指す育成コースに移った。
 学校の部活動で水泳部に所属するが、校舎にプールがなく、専任の指導者はいない。同センターのコーチから週4回、2時間みっちり指導を受けてきた。
 6月に閉館を知らされた後、競技を続ける道を探った。別の教室は市中心部にあり、移動に時間がかかる上、月謝や交通費もかさむ。「生活から水泳がなくなるのは考えられない。でも親に迷惑をかけたくない」。大好きな水泳を続けるか迷っている。
 同センターは1985年6月開館。25メートル8コースのプール、ボウリング場、スポーツジム、バッティングセンターなどを備える。コロナ禍で利用者が減り、施設の老朽化もあり、市内の運営会社が閉館を決めた。
 水泳教室の会員約860人のうち、約500人は小中高生で、影響は少なくない。香春さんのきょうだいも会員で、母親の直子さん(44)は8月、南部地域の水泳環境整備を求める陳情書を市議会に提出。1千筆超の署名を添えた。
 「コーチが移籍する諫早のスクールに変わる人もいるが、金銭的に難しく、送迎もできない」。直子さんは、市民神の島プール(神ノ島町3丁目)での会員引き継ぎを望む。同センターから車で20分程度の距離で、送迎支援の検討も市に求めたが、現時点で納得できる代替案は示されていない。
 市は学校部活動の地域移行を検討する一方、今回のケースは民間企業の意向次第で、スポーツに打ち込む子どもにしわ寄せを及ぼす「もろさ」を露呈した。高齢化が著しい南部地域。生涯スポーツや若い世代のコミュニティー、中高年の生きがいづくりの“核”が消えるだけでなく、今後のまちづくりに影を落とすことは否めない。

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