餅が喉に詰まったら…掃除機で吸引はNG 救急部医師が対応方法を解説

窒息に陥った人が見せる「チョークサイン」
左右の肩甲骨の真ん中を力強くたたく「背部叩打法」
手の平の付け根でたたく
おなかを圧迫する「腹部突き上げ法」
片方の手で握り拳をつくり、その手をもう一方の手で包むように握る
吐いた物による窒息を防ぐため、顔を横にして寝かす
上側の手の甲は顔の下に入れる

 年末年始は、餅を喉に詰まらせる窒息事故や飲酒による急性アルコール中毒の患者が増える時期。新年を健やかに過ごすためにも、予防法や万が一の時の対処法を知っておきたい。福井大学医学部附属病院救急部の山田直樹助教に解説してもらった。

掃除機の吸引は「リスク大きい。やらないで」

 餅を喉に詰まらせると、気道をふさいで窒息につながる場合がある。加齢とともに▽かむ力▽のみ込む力▽せきで押し返す力―などが弱くなり、特に高齢者は注意が必要だ。

 異物がのどにつまり、窒息に陥った人は、親指と人さし指で喉をつかむしぐさ「チョークサイン」を見せることが多い。周囲の人がこのしぐさを見つけたら、すぐに応急処置を始める。「掃除機で餅を吸引すればいい」と考える人もいるだろうが、山田医師は「口内を傷つけるなど、リスクが大きいのでやらないで」と訴える。対処法は呼びかけへの反応で変わる。

【反応がある】

①せきをしている場合は、完全に気道がふさがっていない証拠。せきを続けさせる。この時、口に指を入れて餅を取り出そうとしてはいけない。餅がより奥にいって気道をふさいでしまったり、救助者が指をかまれてけがをする恐れがあるためだ。

②せきをしても餅がとれない、せきができなくなった時は、周囲の人に119番を依頼し、すぐに餅の除去を始める。まずは「背部叩打法」から試す。患者の後ろに回り、左右の肩甲骨の真ん中を手のひらの付け根部分で力強くバンバンと何度もたたく。必ず上体を倒して行う。「はたくような感じではダメ。かなり強くたたいて」

③背部叩打法を試しても効果がない場合は、おなかを圧迫する「腹部突き上げ法」を試みる。患者の後ろに回り、腰のあたりに腕を回す。片方の手で握り拳をつくり、親指側を肋骨(ろっこつ)の下部の尖っている部分「剣状突起」とへその間に当てる。もう一方の手で握り拳を包むように握り、素早く自分側に向けて一気に引き上げることを繰り返す。

 内臓を痛める可能性があるので、救急隊員が到着したら腹部突き上げ法を行ったことを伝える。餅を除去できても念のため受診するといい。乳児と妊婦には行ってはいけない。背部叩打法のみ行う。未就学児も避けるようにする。

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【乳児の場合】

 乳児には背部叩打法を行う。腕や膝の上に乳児をうつぶせに乗せて手のひらであごを支える。頭は体よりも低く。手のひらの付け根で背中の真ん中を数回強くたたく。

【反応がない】

 ぐったりして反応がない場合は、周囲の人に119番してもらい、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行う。

【予防のポイント】 ▽餅を小さく切り、食べやすい大きさにする(目安は1センチ角) ▽お茶や汁物を飲んで喉を潤してから食べる ▽ゆっくりとよくかんでから飲み込む ▽高齢者はできるだけ一人で食べない急性アルコール中毒の対応方法

 急性アルコール中毒は、短時間で多量のお酒を飲み、血中アルコール濃度が急上昇することで起こる。一緒に飲んでいた人が、たたいたり揺さぶったりしても反応がない、大きないびきをかいているなどの症状がある場合は、すぐに119番する。

 急性アルコール中毒になって死亡する原因の多くが「吐しゃ物がつまることでの窒息」(山田医師)。意識がなくても嘔吐(おうと)することがある一方で、アルコールの影響で異物を追い出す反応は鈍っているため、吐いた物が喉に詰まって死に至るケースがある。

 救急隊員が到着するまで、介抱する人は患者の顔を横に向かせて寝かせる。上側の手の甲は顔の下に入れる。必ず誰かが付き添い、嘔吐していないかや呼吸しているかなどを時々確認する。意識がある場合は、血中アルコール濃度を下げるために水やスポーツドリンクを飲ませる。

 お酒に強い体質かどうかは、体内に入ったアルコールを分解する肝臓の酵素の働きで決まる。遺伝によるものなので、飲酒の経験を積んでも強くなることはないという。「このくらいなら大丈夫だろう」「慣れれば強くなる」などと無理強いして飲ませないで。

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【予防のポイント】 ▽自分の適量、体調を把握する ▽イッキ飲みしない ▽空腹の状態でお酒を飲まない。食事をとりながら飲む ▽水などノンアルコールの飲み物をはさみながらお酒を飲む

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