17歳中村卓也さん、津軽三味線「日本一」に 挑戦3度目、ついに栄冠 網干出身「唯一のもの、つくりたい」

津軽三味線の全国大会で「日本一部門」の1位に輝いた中村卓也さん=姫路市網干区余子浜

 姫路・網干出身の津軽三味線奏者中村卓也さん(17)=仙台市=が、滋賀県で開かれた全国大会で、最も格の高い「日本一部門」を制した。10代前半から数々の全国コンクールを総なめするホープだが、プロへの登竜門である同部門の優勝は悲願だった。別部門を制覇し、史上最年少でのダブル受賞も果たした。「これは卓也のリズムだ、という唯一のものをつくっていきたい」と将来を見据える。(上杉順子)

 実家は兵庫県姫路市網干区の和楽器店。琴や三味線、和太鼓に囲まれて育ち、祖父から演奏法を教わった。10歳の時に津軽三味線の音色に魅了され、独学で弾くように。小学6年から三絃(さんげん)小田島流という流派の教室に通い、中学1年から全国大会のジュニアや一般の部で優勝を重ねた。

 実力を見込んだ同流宗家から内弟子の声がかかり、新型コロナ禍で遅れたものの昨年8月に仙台市へ。家元の2代目小田島徳旺(とくおう)さんの下で鍛錬を積んでいる。

 「日本一部門」は、毎年秋に大津市で開かれる「津軽三味線全国大会 日本の真ん中フェスティバルinびわ湖」の1部門。津軽五大民謡の中から、奏者自らがアレンジした曲を弾く。参加人数が多く、例年激戦となる。11回目の今年は11月26日にあり、19人が出場した。中村さんは2021年に初めて出て2位。翌年は親元を離れた直後で実力が出せず、3位に終わった。

 雪辱を期した今年は、速いテンポで弾く奏者が目立つ中、基本に立ち返ってゆっくりシンプルな演奏を心がけた。「こんなにゆっくりは初めてというくらい、意識して弾いた。音を外さない正確性が評価されたのでは」と分析する。

 同大会ではこのほか、津軽五大民謡からくじ引きで決まった曲を歌手に合わせて演奏する「唄付け抽選曲部門」でも、3度目の優勝を飾った。

 日本一部門の1位は、今後プロになってやっていくために大切なタイトルだったといい、「取れてほっとした」。修業後は東京を拠点に活動するのが夢で「他ジャンルの音楽家とも共演したいし、学校公演をもっと斬新に演出するなどして、同世代が津軽三味線に興味を持つ入り口もつくりたい」と語る。

 中村さんは今後、播磨地域では来年4月7日、姫路キャスパホールである兄弟子のプロ奏者・浅野祥さんのコンサートに出演する。姫路労音TEL079.290.5522

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