【早出し】本紙記者、南極へ・ペンギン営巣地訪問や白瀬氷河視察 南極で広報フライト

白瀬氷河の河口付近。絶えず、膨大な氷が押し出されている=26日、南極(観測隊ヘリから撮影)

 【昭和基地=報道部・小田信博】第65次南極観測隊(橋田元隊長)の報道同行者らを対象とした広報フライトが26日行われた。ヘリコプターでアデリーペンギンの集団営巣地「ルッカリー」を訪れ、南極最大級の流速を誇る白瀬氷河を視察した。

 普段、アデリーペンギンは海上にいるが、10月ごろの繁殖期を迎えると、南極の沿岸部に集まってルッカリーを形成する。今の時期は、卵からかえったひなを育てる時期に当たる。

 昭和基地の南方約50キロにある露岩帯スカルブスネスの「鳥の巣湾」では、第65次隊の調査チームが近くの「きざはし浜小屋」で生活しながら、ペンギンの行動や海洋環境を調べる。衛星利用測位システム(GPS)のほか、海に潜った際の深度や加速度を計測する小型の装置をペンギンの背中に取り付けて行動を追跡。海洋や海氷が生態系に与える影響などを探る。

 ルッカリーには多くのペンギンが集まり、ひなの面倒を見る姿が見られた。警戒心は低く、少し近寄っても逃げることはない。かわいさあふれる空間とは裏腹に、餌とするオキアミや小魚が腐敗したような臭いがするため、居心地が良い場所かどうかは人を選びそうだ。国分亙彦さん(44)=国立極地研究所先端研究推進系、川崎市出身=は「ペンギンの生態を通じて環境の変化を調べてみたい」と意気込んでいた。

 白瀬氷河は昭和基地の南方約100キロに位置し、全長約85キロ、幅約10キロ。氷の流れる速度は年間2キロ以上に及ぶ。遠目には氷河と分からないが、しばらくするとひび割れた巨大な氷の塊が幾つも現れ、河口へと押し出される様子が見て取れた。スケールの大きさに圧倒されつつ、絶えず膨大な氷が海に流れ出る怖さも感じた。

アデリーペンギンのルッカリー。ひなを育てる姿もあった=26日、南極・鳥の巣湾
発信器を取り付けたペンギン=26日、南極・鳥の巣湾

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