“お酒”がつなぐローグライクとシミュレーションRPG――「BAR ステラアビス」先行プレイレポート

日本一ソフトウェアが2024年2月29日に発売するPS5/PS4/Nintendo Switch用ソフト「BAR ステラアビス」。ゲーム序盤の先行プレイレポートをお届けする。

「BAR ステラアビス」は、プレイの度に姿を変える異世界ダンジョンを探索していくローグライク要素と、「魔界戦記ディスガイア」に代表される、日本一ソフトウェアのお家芸ともいえるシミュレーションRPGが組み合わさったタイトルだ。

また、異世界探索のかたわら、一風変わった常連客と酒を酌み交わすバー“ステラアビス”での時間も、本作ならではの要素となっている。

今回はひと足早くゲームの冒頭から数時間程度プレイすることができたので、ゲームの流れや特徴を紹介していこう。

■バーで酔いつぶれるところから始まる物語

本作の主人公(CV:森なな子)はある日、都会の片隅にあるバー“ステラアビス”に辿り着く。そこでマスターに勧められるままに注文したカクテルに酔い、そのまま眠りに落ちてしまう。その後、聞き慣れない声に目を覚ますと、そこは現実とは遠く離れた幻想的な世界だった。

声の主はティプシィ(CV:村瀬迪与)という、宙に浮く不思議な生物。彼からこの世界が酒に酔った人間の見る夢“ヨイの世界”であることを告げられるとともに、主人公は顔と腕を奪われ、この夢の世界に囚われてしまうのだった。

ティプシィによってサマヨイと名付けられた主人公は、ステラアビスではバーのマスター(CV:清水彩香)、ヨイの世界ではティプシィの助けを受けて、失った顔と腕を取り戻すために行動することとなる。サマヨイはなぜかステラアビスを出ることができないので、基本的にはステラアビスとヨイの世界を行き来することで物語が進行していく。

タイトルを構成する一つ一つの要素に珍しさはさほどないものの、ここに“お酒”というエッセンスが入り込むことで、本作が独自の魅力を持つタイトルに昇華されている。次項からそのポイントに触れていこうと思う。

■お酒を酌み交わすことで常連客との仲を深めつつ、探索に向けた準備も

本作の大まかなゲームサイクルは、拠点となるステラアビスで常連客との交流を重ね、その後にヨイの世界の探索に向かうというもの。基本的にはこの2つの要素を繰り返していくことになるのだが、まずはステラアビスでできることを紹介する。

先述の通り、ステラアビスでの導き手となるのはバーのマスター。進行で困ったことがあれば、彼女に話を聞くことで流れは概ね理解できるようになっている。

とはいえ、実際に行うことはとてもシンプルで、常連客と相席してお酒を酌み交わしながら語らっていくだけ。最初の話し相手となるレオナ(CV:黒木ほの香)をはじめ、個性豊かな面々が登場するので、気になる客がいたらまずは話しかけてみるのが良いだろう。

会話は単に相手の話を聞くだけでなく、「肯」「否」「笑」「疑」の相槌4つと「酒を呑む」の5種類のリアクションが用意されており、会話の節々にリアクションをとることで、会話を盛り上げることが可能。会話が弾まないとお開きになってしまうほか、酒を呑みすぎると視界がぼやけ、強制的にヨイの世界へと誘われてしまうので、注意しよう。

今回、何回か会話を楽しんでみたのだが、例えばレオナの場合は人当たりの良さはありつつも、話を重ねていく中でのちょっとした仕草や言葉が気になってくる。現実にもある、こうした会話の妙をゲームならではのシステムで落とし込んでいる。

もちろん、会話することによるゲーム上のメリットも存在し、会話中に呑んだカクテルの種類と量によって、ヨイの世界の攻略時にさまざまな効果が発動するようになっている。探索する場所によって役に立つ効果も変わってくるので、カクテル選びも重要になってくるだろう。また、相席で会話が弾むとカクテルの追加注文もできるため、より多くの効果を得たいのであれば、会話を盛り上げることは必然だ。

本作には約300種類のカクテルが登場。最初のうちに注文できる数は少ないものの、ヨイの世界の探索で集めたお金を使うことで、徐々に開放されていく。筆者はカクテルを嗜む程度(メニューにあるものをいくつか呑むくらい)だが、こうして見ると本当にたくさんの種類があるのだなあと新たな気づきを得られた。普段お酒を呑む人でなくとも、擬似的なバーでのひと時を楽しめる要素と感じてもらえるのではないだろうか。

■ローグライクならではのその場限りの強化要素

ステラアビスで一通りの準備を終えたら、いよいよヨイの世界への探索に挑む。行く方法はカウンターに座り、そのまま眠るだけ。そこからワールドマップへと移るので、挑戦する醒界(せかい)を選んでいく。醒界自体は階層化されており、すべてのフロアを順に進み、最後のフロアに待ち受けるボスを撃破すれば攻略完了、といった感じだ。

ここでひとつ気をつけておきたいのが、本作がローグライクの要素を備えているということだ。プレイ開始時は常にレベル1の状態から始まるため、先ほど紹介したカクテルの効果をいかに活用するか、そしてダンジョン内でどのように立ち回るのかが重要になる。

ダンジョン内では生い茂る草や点在する宝箱から装備やアイテム、お金などを入手可能。フロア内をくまなく探索するもよし、脇目もふらず次の階層を目指すもよし。プレイヤーの裁量に委ねられているが、画面上に表示されているエナジーが行動によって減っていき、0になると継続ダメージが発生するため、管理には気をつけておきたいところ(エナジーを回復するアイテムも存在する)。

そして、ダンジョンに徘徊するモンスターに接触すると、マス目上の戦闘用マップに移行し、そのままターン制のシミュレーションRPG方式での戦闘が行われる。キャラクターの攻撃方法は初期時点で3つ(「通常攻撃」「範囲攻撃」「遠距離攻撃」)で、ここにダンジョン探索中に入手した星座の力“ステラ”をセットすることで、その性能が変化する。

ダンジョン攻略で意識しておきたい点は多々あるが、今回はその中でも大きなポイントとなる、仲間との出会いとステラのカスタマイズ性について触れておこう。

ダンジョンの探索開始時はプレイヤーは1人で挑むことになるのだが、ステラアビスの常連客と相席することで、ダンジョンで出会った際に仲間になってくれる。探索中に見かけたら、基本的に立ち寄るようにしておくと安心して進められそうだ。

ダンジョンでともに行動できるメンバーは2人までで、基本的にランダムではあるものの、最後に相席したキャラとは出会いやすくなるという。序盤に関しては細かく気にせずとも立ち回れる印象だったが、敵との属性の相性なども考慮の上、連れて行くといいだろう。

なお、ダンジョンで行動をともにしたり、ダンジョンで入手したプレゼントを贈ったりすることで、相手とのキズナが上昇し、そのキャラクターの初期装備ステラが強力なものに変化。さらに、レベルアップ時にサマヨイのステータスがより高く上昇するようになるなど、さまざまな恩恵があるので、そういう点でも常連客との交流は重要だ。

そして、ステラに関しては、技の攻撃範囲・威力が変化する「範囲ステラ」、MPを消費して技に効果を追加する「スキルステラ」の2種類が用意されている。範囲ステラが攻撃の基本軸、スキルステラが攻撃のバリエーションを担うという考え方で基本的には問題ないだろう。

範囲ステラは効果範囲に対して、スキルステラの威力補正や消費MP補正がかかるようになっている。どちらがより良いというよりは、3つのスキルセットの中でどうバランスをとっていくかが重要になりそうだ。

一方、スキルステラは1つのスキルセットに対して3つのスロットが用意されている。デフォルトではMPを消費しない攻撃がセットされているのだが、最終的に組み合わせをどう変えるかで戦略性が大きく変わる要素になってきそう。

今回のプレイでは割と手に入れたステラを片っ端から装備していったので大きな恩恵を受けるには至らなかったが、組み合わせのバリエーションによって性能にはバリエーションが出てきそう。同社のタイトルで言うと「ディスガイア」シリーズはキャラクターの連携で多彩な攻撃を繰り出すことができるが、本作はそれをスキルセットというかたちでアプローチしている。

本作ではより深い醒界に挑むことで物語は進行。筆者は今回、第二醒界の途中までをプレイしたのだが、ゲームサイクルのシンプルさに対して、やれることが多彩で理解が深まれば深まるほど遊びごたえが増していく感覚があった。その上で、探索が終了するとセットしたステラもすべてリセットされることから、毎回ステラを組み立てるローグライクならではの楽しさもある。

ローグライクとシミュレーションRPGの掛け合わせがどのようなものになるのか、よりイメージしやすくなる今回のプレイだった。気になる人は発売を楽しみにしていてほしい。

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