書けそうで書けないヘタウマ書体「バサころ」考案 変幻自在の字体操る書道家のプロ意識

好きなテレビ番組のロゴなども手がけてみたいと目標を語る住吉さん(大津市坂本8丁目)

 書道家の住吉菜津美さん(40)は、企業のロゴや商品のパッケージを筆文字でデザインしている。字体は変幻自在で、これまでの作品を見比べても同じ作者とは思えない。「作風がないのが私の作風」と笑う。そこには、「依頼者の気持ちを形にしたい」「店舗や企業、商品の魅力を引き出したい」というプロ意識がある。

 実は手がけてきたデザインは、私たちの身近にある。

 2018年に湖国の野外音楽イベント「イナズマロックフェス」に関連し、西川貴教さんのプロデュース商品を担当した。京都の有名焼き肉店の店舗ロゴや大津市にある漬物店のパッケージなどもデザインした。書けそうで書けないヘタウマの字をテーマに考案した書体「バサころ」は、テレビ番組のテロップでも使われている。

 石川県出身。6歳から書道を始め、高校まで続けた。高校卒業後に書道を究めようと東近江市の専門学校に入学し、湖国との縁ができた。「人の優しさとか滋賀が大好きになった」と話す。

 金沢市のデザイン会社に就職し、筆文字のデザインを担った。整った美しい文字には自信があったが、社長の答えは「つまらない」だった。「自分はうまいと思って生きてきたから、ショックを受けた」と振り返る。

 滋賀好きが高じて守山市のデザイン会社に転職。筆文字以外の仕事が増えた時、ふと頭をよぎった。「夢中になれるものは何だろう」。答えは筆文字のデザインだった。

 2013年に独立し、現在は大津市を拠点に活動している。生活の一部に取り入れるなど、もっと気軽に筆文字に親しんでもらおうと、最近は赤ちゃんやペットの命名書も請け負う。

 「お酒が好きなので、滋賀の地酒のパッケージも書いてみたい」と夢を語る。大津市在住。

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