全国高校サッカー選手権 長総大付・宇土 父はV長崎の礎を築いたFW

「自分の持ち味を出して勝ちたい」と語る長崎総合科学大付のMF宇土=長崎市、県スポ協人工芝グラウンド

 12月28日に開幕する第102回全国高校サッカー選手権。長崎県代表で2大会ぶり9度目出場の長崎総合科学大付。
 そのチームの背番号「10」を背負うMF宇土尊琉(たける)(17)。落ち着いたゲームメークと展開力、ロングシュートが武器のボランチは、憧れの大舞台を前に、はやる気持ちを抑えきれない。サッカー一家で育った2年生は「持ち味を出して勝ちたい」。強い決意を胸にピッチに立つ。
 島原市有明町出身。3人きょうだいの次男として生まれ、畑に囲まれたのどかな地域で育った。父の秀孝さん(44)は草創期のV・ファーレン長崎で九州リーグを戦った俊足FW。後のJリーグクラブの礎となった1人だ。二つ上の兄空冴(つばさ)さん(19)は長総大付OBで、有明中3年の妹來南(らら)さん(15)も女子サッカーで活躍している。
 幼い頃から父の練習や試合について行き、ボールを蹴って遊んだ。家の中ではきょうだいでボールの取り合い。秀孝さんは「とにかく騒がしかった。障子も破れて、めちゃくちゃだった」と苦笑いしながら振り返る。
 コロナ禍だった中学時代は仲間とサッカーができない日々が続く中、いつも秀孝さんが練習相手になってくれた。自転車に乗った父と2人で県立百花台公園(雲仙市国見町)まで約10キロを走り、芝生の上で一緒にボールを蹴り合った。「アドバイスしてくれて、自分を成長させてくれた何よりの理解者」という。
 「どこの高校が選手権に一番近いか」。中学3年生になると進学先を悩んだ。決め手になったのは長総大付への練習参加。「ここに来たら選手権に行けるぞ」。故小嶺忠敏前監督の自信に満ちあふれた言葉が胸に響いた。当時、自覚していた課題は持久力。ハードな練習をこなしていく高校生を見て、ここなら成長できると確信した。「選手権」と「持久力」を求めて、県内外の強豪数校の中から選んだ。
 入学後、思うような結果は残せていない。昨夏の四国インターハイではピッチに立たせてもらったが、それ以降、チームは県内で勝てなくなった。「何をやっても結果がついてこなかったことが一番きつかった」。今年の県高総体も3回戦で国見に敗れた。その悔しさと苦しさをみんなで乗り越えるため、練習中から声を出し合い、何が足りないかを選手だけで話し合った。遠征続きの夏場の厳しい練習を経て、強さを取り戻した。
 初めて立つ選手権のピッチ。「インターハイとは雰囲気が全然違う特別な大会。対人で負けず、最後まで体を張る。1試合でも多く勝って成長したい」と誓う。秀孝さんは「尊琉の良さは冷静な判断ができること。ボランチから常にゴールを見てプレーしてほしい」とエール。父親譲りの端正な顔立ちの背番号10は、攻守のかじ取り役としてチームをけん引する。


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