自転車の盗難被害、コロナ禍経て増加に転じる 防犯意識薄れたか、兵庫は昨年の2割増

自転車の施錠を呼びかける県警生活安全企画課の仲正志警部補=神戸市中央区下山手通5

 兵庫県内で県警が認知した自転車盗難被害が、11月末時点で前年同期より約1400件多い7314件に上った。新型コロナウイルス禍が落ち着き、都市部に人出が戻った影響とみられ、昨年1年間の被害を既に上回る。被害の7割近くが無施錠といい、県警が注意を呼びかけている。

 県警によると、県内の2023年11月末時点の自転車盗難被害は、前年同期の5925件から2割以上増加。被害者の約65%が20代以下で、地域別では、神戸=2120件▽尼崎=1442件▽西宮市=924件-など神戸・阪神間で7割を占めている。

 過去10年を見ると、13年以降は減少が続き、外出自粛などが求められたコロナ禍の20、21年は19年に比べて2千~3千件減った。22年から増加に転じ、23年はコロナ禍前の19年の水準に近づいている。

 県警生活安全企画課の担当者は「コロナ禍で人の動きが止まって被害が少なくなっていたが、通常の社会生活に戻り、人出に合わせて被害も増えている」と説明する。

 23年に盗まれた自転車のうち、無施錠は前年とほぼ同じ約68%。13~21年は50%台前半から60%前後で、増加傾向にある。担当者は「コロナ禍で街頭犯罪が減り、防犯意識が薄れたのかもしれない」と分析する。

 こうした状況を踏まえ、県警は自転車への施錠を呼びかける動画を作成。主にX(旧ツイッター)やユーチューブで発信し、若者を中心に注意を促している。

 同課の池添塁次席は「昔は鍵を二つ付けるツーロックが重要と言われたが、一つでもいいので、少し自転車から離れる場合でも鍵をかけてほしい」と話した。 ### ■被害7割が無施錠、動画で注意呼びかけ

 兵庫県内で増加している自転車の盗難被害。盗まれた自転車の7割近くが施錠していない状態だった。県警はこうした状況を踏まえ、自転車の施錠を訴える動画を作成。主にX(旧ツイッター)やユーチューブで発信し、若者を中心に注意を呼びかけている。

 動画のタイトルは「今日から絶対に鍵かけてや! 自転車からのお願い」。擬人化した自転車たちの日常会話を通して、県内の被害状況や施錠の重要性、人通りの多い道路は避けて駐輪場に止めるなどの注意点を伝えている。

 動画は県警生活安全企画課の仲正志警部補(42)が編集し、自転車たちの声は仲警部補の家族が演じた。

 企画段階で思い出したのは、最寄りの駅前に並ぶ自転車だった。その多くに鍵がかかっておらず、中には長年使われていそうな自転車もあった。「なんだか大切にされていないようで…。かわいそうだなと思いまして」。動画発案のきっかけを振り返る。

 私たち自転車も家族の一員です-。動画の最後にはいつまでも大切に乗ってほしいという思いを込めた。鍵を二つ付けるのが効果的だが、仲警部補は「まずは一つでもいい。とにかく自転車に鍵をかけてほしい」と話す。

 動画は兵庫県警公式チャンネル(http://www.youtube.com/@user-gd3fe4lo8g)で見ることができる。(篠原拓真)

© 株式会社神戸新聞社