負け顔のいい雀士たれ

 マージャンの世界には「負け顔のいい雀士たれ」という詠み人知らずの名言がある。とても奥の深いゲームで、明らかに「上手(うま)い・下手」はあるが、どんなに考え抜いて打ったつもりでも運の要素が排除できない▲だから、覚えたての初心者がベテランを負かすこともあるし、確率を超えた不条理も頻繁に起きる。そこで冒頭の言葉の出番。調子のいい日に上機嫌なのは当たり前、大切なのは負けた時▲気楽なボードゲームなんかになぞらえてよいのか、と迷い迷い書くのだが、カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備構想で、申請を不認定とされた県や佐世保市の“負け顔”はどうだろう▲公表された「見解」が国の説明の全てだとしたら、右から左に受け入れ難いのは当然だ。賛否の分かれる計画に覚悟を決めて踏み出し、年月と労力と公費を積み重ねてきたのだ▲だが「不服審査請求も視野に」とは穏やかではない。一度下された決定はなかなか簡単に…などと書いたら「釈迦に説法」のお手本もいいところだろうが、厳しく不合格を宣告された計画だ、懸命に粘った先に別の未来が見えてくるのかどうか▲当面は対応と推移を見守ることになるが、マージャンの場合は、極端に負け顔が悪いと次からは誘われない-という分かりやすい結末が待っている。(智)

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