コロナ禍で困窮男性、長崎市社協などの支援受け前へ 「暗闇」を経て再出発

永田さん(奥)に近況を報告するタカシさん=長崎市恵美須町、市社会福祉協議会

 何かとせわしない年の瀬。「1年前はまだ暗闇の中を歩いていた」。新型コロナウイルス禍の影響で職を失った長崎市の会社員タカシさん(34)=仮名=は苦しみながらも、市社会福祉協議会(市社協)などの支援を得て、妻と幼い子ども2人の4人家族で今年、再出発を果たした。「目標へ頑張れたら」。前を向いて来る年を迎える。
 20代前半から個人事業主として造船関連の仕事に従事。2017年に結婚し、長女が生まれ、平穏な日々を送っていた。20年、コロナ禍で受注が減り、出勤見合わせの日が続いた。収入は3分の2程度になり、光熱費を滞納するように。
 国の特例貸し付け制度に申し込むため、市社協に相談。当面の生活費を工面することができ、21年12月、別の造船関連会社に入社したが、以前の収入には及ばなかった。今後への不安から眠れなくなり、適応障害と診断され、昨年8月、退職した。
 途方に暮れるタカシさんを手助けしたのは市社協の市生活支援相談センターだった。家計改善支援員の永田日向子さんの勧めで、ハローワークの職業訓練制度を利用。昨年11月から3カ月間、月10万円の給付を受けながらファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得を目指した。
 その間も市社協のサポートで家計の収支改善に取り組んだが、苦しさは変わらなかった。「相談中に涙することもあった」(タカシさん)。悩んだ末、自己破産を申請し、生活再建を目指すことを決意。今年3月、手続きを終え、負債は約200万円に上った。
 その後、生活保護を一時的に受けたが、FP3級に合格し、7月から営業職で働き始めた。ぎりぎりの生活だが、週末は家族との時間も取れるようになった。
 「一人でどうしていいか分からず、精神的に追い詰められた。相談できて本当に助かった」。今月中旬、永田さんに近況報告したタカシさん。「目標は何ですか」との問いかけに、照れくさそうにこう答えた。
 「家族旅行に行くのが目標です」

 同センターに寄せられた本年度の相談件数は11月末時点で665件。コロナ禍前の19年度(854件)を上回るペースの年間1千件程度と見込む。担当者は「困窮していた人がコロナ禍が重なり、さらに困窮する印象がある。物価高で収支のバランスが崩れるケースもあり、しっかりと相談につなげる工夫をしていかなければ」と話す。

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