仏教音楽をウィーンで披露 100年前の“夢”叶える 雲仙・一乗院の住職ら

ウィーン在住演奏家らとともに仏教音楽を披露する金剛流御詠歌教師有志=12月10日(現地時間)、ウィーン楽友協会(西住職提供)

 長崎県雲仙市南串山町の寺院・一乗院の西泰仁住職(53)らがオーストリアのウィーンにある世界的なホール「ウィーン楽友協会」で、平安時代から伝わる仏教音楽「御詠歌」などを披露。西住職は「世界に通用する音楽なのだということを、日本の人にも知ってほしい」と話した。
 御詠歌は、仏の教えなどの短歌に巡礼者が節回しを付け、約千年前に誕生した。だが法要などで唱えることが少ないため知る人が少ないという。
 口伝えで受け継がれてきた金剛流御詠歌を譜面化したのは曽我部俊雄大和尚(しゅんのうだいわじょう)。約100年前に「御詠歌混声合唱をオーケストラで披露してほしい」という大和尚の夢をかなえようと、西住職ら西日本の有志4人が公演を企画した。
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートで知られ、150年以上の歴史がある同ホールでの公演は、日本の仏教界で初めて。12月10日(現地時間)、現地在住のバイオリニストらも演奏に加わり、御詠歌など仏教音楽14曲を全国から集まった金剛流御詠歌教師有志の50人が2時間かけて披露した。
 心穏やかな祈りの歌を唱え終わると1500人以上の観客は総立ち。「ブラボー」の声と拍手がホールに響き続けた。西住職は「世界最高峰の舞台で受け入れられたんだと思い、うれしくて涙が出た」と振り返った。聴衆から「指揮者がいないのに所作と声がぴったり」と驚かれたという。
 来年はスイスのバーゼルで公演予定。「曲を聴いた人から『賛美歌みたい』と言われるが、50年後には『御詠歌みたい』と言ってもらえるように普及したい」と抱負を語った。

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