日本にはいくつもの人気カレーブランドがありますが、その多くが店頭での提供だけでなく、「オリジナル」のレトルト商品を展開しています。
店頭で食べるカレーは美味しくとも、レトルトとなったらまた違うんじゃないの? ……そんなふうにうがって考え、レトルトを購入するのを躊躇する人も少なくないかもしれません。
そこで今回は、人気カレーブランド7社のレトルトカレーを食べ比べ! 実店舗で食べる味との「再現度」の高さを比べてみることにします。
『カレーハウスCoCo壱番屋』「ポークカレー」
再現度ナンバーワン。贈答にも持ってこいの絶品カレー
1978年、愛知県名古屋市郊外の一店舗からスタートした『カレーハウスCoCo壱番屋』(以下、『CoCo壱』)。国内外に1200店舗以上を展開する日本一と言って良いカレーブランドです。
店頭では、ポーク、ビーフ、甘口ポークなど5種類のソースに辛さ、甘さ、選べるご飯の量などをカスタマイズでき、50種類以上のトッピングを含め、その組み合わせはなんと12億通り以上とも。
さて、そんな『CoCo壱』のレトルトカレーは「ポークカレー」という商品。1人前で220gというやや多めのルーが嬉しいですが、果たしてその味は……!?
『CoCo壱』の「ポークカレー」は万人好みの誰でも美味しくいただけるカレーである一方、後半から複雑なコクと重なりあうスパイス感が特徴ですが、レトルトでもまさにあの美味しさをそのまま再現している印象です。
遜色なく、目をつぶって食べたとしても「これは『CoCo壱』!」とはっきり言えるほどの完成度で、まさしく美味の一言。
当初、1個「480円(税込)」という価格に少々手が出しにくいと感じていましたが、一口食べればこの価格にも十分納得。自分用でももちろん良いですが、セットにして贈答にするのもかなり喜ばれるのではないかと思いました。
『チャンピオンカレー』「チャンピオンカレー(中辛)」
さすが金沢カレーの元祖! 濃厚なだけでない滋味深い味わい
創業昭和36年、元祖金沢カレーの専門チェーン店『チャンピオンカレー』。
『チャンカレ』の愛称で親しまれており、特に北陸エリアにおけるカレー文化を開拓した歴史から、地元ではカリスマ視される名ブランドです。
もちろんレトルトも販売しており、金沢駅構内のお土産屋さんなどでも屈指の人気を誇っています。
粘度ある濃厚なカレールーを、キャベツ、とんかつと一緒にライスに合わせていただくのが『チャンカレ』流。このレトルトでも店頭での食べ方にならって、そのようにしてみました。果たしてその味は!?
『チャンカレ』のカレールーの特徴は、奥深くまろやかなコク。野菜類が溶け込んだ味わいであり、その奥の奥のほうでピリピリとしたスパイス感を感じることができます。
この滋味深い味わいはレトルトでもしっかり再現されていました。もちろん、キャベツ、とんかつとの相性も抜群で、ご飯がどんどん進みます。
残念なのは『チャンカレ』および金沢カレーの特徴でもある「銀の皿」を筆者が持っていなかったこと。この『チャンカレ』のレトルト用に「銀の皿」を用意したほうが良いかな……そんな風にさえ思うほど、とにかくうまいレトルトカレーでした。
『日乃屋カレー』「和風ビーフカレー」
『日乃屋』特有の「甘み」はレトルトでさらに際立つ
続いていただくのは、全国97店舗を展開するカレーチェーン『日乃屋カレー』(以下、『日乃屋』)。
多種多様なカレーが世に出回っていますが、一貫して「日本のカレー」の味にこだわり、カレーの聖地・神田エリアでは3回も優勝を経験したブランドでもあります。
もちろん、S&Bとのタイアップでレトルトも発売しており、スーパーマーケットなどでも広く流通しています。
クラシカルな味わいの中に、甘みをアクセントした味が特徴で、これがやけにクセになるわけですが、果たしてレトルトではどれだけの再現がなされているのでしょうか。
店頭で食べるよりも、さらに甘みを際立たせた印象で、「ちょっと違う」というのが正直な印象でした。しかし、これが悪いということではなく、「別物」として考えれば十分美味しく、クセになる味わいでもあります。
甘みとスパイス感の複雑なバランスはさすがS&Bと言いたくなる完成度で、従来の『日乃屋』ファン以外にも広く受け入れれるようにも思いました。
絶対的な『日乃屋』ファンは認めないかもしれませんが、これはこれで十分アリな一品だと思いました。
『自由軒』「名物カレー」
手間はかかれど、大阪を代表する「名物カレー」が家庭で再現できる
大阪エリアでカレーと言えば、まずこの店の名が挙がるはずの『自由軒』。大阪に2店舗のみの展開ですが、かの織田作之助も愛した伝統の味わいは、今日も頑なに守り抜かれているとも言えましょう。
さて、この『自由軒』の人気ナンバーワンの「名物カレー」。どういうものかと言うと、大胆にもフライパンの上で和えたカレーとライスに、生玉子を添えてリゾット風にいただくというもの。
今では「カレーに生玉子を乗せる」というスタイルはさして珍しいわけではないですが、実はこれ『自由軒』が元祖だと言われています。
この『自由軒』のレトルトはズバリ「名物カレー」。あの店頭でのスタイル同様に、フライパンでカレーとライスを和えてからいただくというものです。レトルトにしては手間がかかるフローですが、その味は果たして!?
店頭での味を知らない人にとっては、そのビジュアルを前に「なんじゃこりゃ!」と思うかもしれませんが、これぞまさしく『ザ・自由軒』の味わいです。奥ゆかしいカレールーの味わいがご飯一粒一粒にまとわりつき、続々とスプーンが進みます。
もちろん、生玉子やソースとの相性も抜群で、なかなかクセになる味わい。さすが伝統を守り抜く『自由軒』だけあって、レトルトでもその味にはいっさいの妥協をしていないことがよく伝わってきました。
「トラは死んで皮をのこす。織田作死んでカレーライスをのこす」という店頭でのキャッチコピーがつい頭に浮かんできました。
『御茶ノ水 小川軒』「ビーフカレー」
高級食材の風味がレトルトでも十分味わえる
東京・御茶ノ水にある老舗のカレーレストラン『御茶ノ水 小川軒』(以下『小川軒』)。
化学調味料不使用にして、高級食材などを使った伝統的な「日本のカレー」で、サラリとしたルーは濃厚で風味豊かなのが特徴です。野菜やお肉の具材がたっぷり入っており、シンプルでクラシカルな味わいが楽しめます。
この『小川軒』でもレトルトを販売していますが、そのパッケージデザインがまずカッコ良いです。ストイックな『小川軒』の姿勢を表すかのように「白」を基調としたもので、印刷には箔押しも使っています。
パッケージからして贅沢ですが、果たしてその味はどうでしょうか。
『小川軒』のカレーの美味しさが、そのままレトルトでも再現されており、他ブランドに比べても頭ひとつ抜きん出た味わい。
レトルトと知らせずに人に出せば、「この人はカレーの達人なのではないか」と思われること必至のクオリティで、かなり美味しいカレーです。
味、スパイス感、コク、粘度とも『小川軒』のカレーそのままであり、これもまた贈答などに持ってこいの絶品カレーのように思いました。とにかく美味しいです。
『ゴーゴーカレー』「ゴーゴーカレー」
金沢カレーインスパイアのジャンク感がヤミツキに!
金沢カレーの元祖は前述の『チャンカレ』ですが、「金沢カレー」というジャンルを全国に広めたことで知られるのが『ゴーゴーカレー』(以下『ゴーゴー』)。
『チャンカレ』ファンの間では「認めない!」という意見もある一方、金沢カレーのスタイルをよりジャンクにしファンを広めた功績は認めざるを得ないでしょう。
さて、この『ゴーゴー』も金沢カレースタイルを踏襲し、カレーと合わせてキャベツ、とんかつを一緒にいただくのがスタンダードな食べ方です。
レトルトももちろん発売していますが、155gの1人前が2袋入った贅沢版。この点もデカ盛り、ジャンク飯好きにはたまらないパッケージになっていると言って良いでしょう。
『ゴーゴー』の強いパンチは、レトルトでももちろん踏襲されており、とんかつと合わせて口にすることでさらに濃厚な味わいになります。また、カレールーのコクの密度が濃いというか、とにかくガツンとくる味わいなので、キャベツが良い意味での箸休めにもなります。
言うに及ばず、金沢カレーの元祖『チャンカレ』とは似て非なる味わいですが、筆者的にはこれはこれで十分アリ。「今日はガッツリ食べたいんだよな」というときには、むしろ『チャンカレ』よりも『ゴーゴー』のほうが向いているようにも思いました。
『カレーショップC&C』「新宿カレー」
新宿っ子&京王線沿線っ子のソウルフードは、レトルトも絶品!
そして、最後にいただくのが、京王線沿線を中心に19店舗を展開するカレー専門チェーン店『カレーショップC&C』(以下『C&C』)。
新宿西口に1968年に創業し、界隈で飲み遊んだシメは『C&C』で……という人も少なくなく、かくいう筆者も朝まで飲んで『C&C』でカレーを食べて帰る、という学生時代をおくっていました。
低価格と佇まいからコストパフォーマンスの良さばかりが評価されがちな『C&C』ですが、様々なカレーブランドを食べ比べてみると、『C&C』のレベルは高級店にも負けない、と筆者は思っています。
もちろん、レトルトカレーも展開しており、『C&C』店頭だけでなく、京王線沿線に多い「京王系」スーパーなどでも購入することができます。あの慣れ親しんだ味、レトルトでもしっかり再現してくれているのでしょうか。
粘度強めで、やや黄みがかったカレーの質感はまさしく『C&C』そのものであり、甘みと辛みが複雑に混じり合う奥ゆかしい味わいも店頭の味をそのまま再現しているように思いました。
この味で育った筆者なので、再現度にも少々厳しく見ていましたが、レトルトもやっぱり『C&C』。唯一無二の泣ける味わいもしっかり再現されているように思いました。
多くのカレーブランドが店頭さながらの味わいを再現していた
一方、大手メーカーのタイアップでは、また違う味わいになる?
ここまで人気カレーブランド7社のレトルトカレーを食べ比べましたが、そのほとんどが店頭と食べるのと変わらない味わいを実現させており、この技術力の高さ、味のこだわりには目を見張るものがありました。
その一方、『日乃屋』のレトルトは、かのS&Bとのタイアップ商品であり、店頭で食べる味わいよりも甘みを際立たせており、オリジナルとはまた違う味わいになっているように思いました。
もちろん、それでも美味しいことには変わりがないのですが、カレーブランドの味を求めて買ったお客さんは、その違いに少し戸惑うかもしれません。
さて、ここまで読んでくださったあなたはどのカレーが気になりましたでしょうか。筆者個人的にはダントツ『C&C』推し、2番手で『チャンカレ』推しという感じです。ぜひ本記事を参考にあなた好みのレトルトカレーを見つけてくださいね。
(うまいめし/ 松田 義人(deco))