「人生は誰も、何も説明的でもないし、伏線もない」役所広司が映画『PERFECT DAYS』と絶賛された演技を語るロングインタビュー

『PERFECT DAYS』© 2023 MASTER MIND Ltd.

名匠ヴィム・ヴェンダース(『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』)が、長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた『PERFECT DAYS』が、現在絶賛公開中だ。このたび、主人公のトイレ清掃員・平山を演じた役所広司のロングインタビュー映像が解禁となった。

名匠ヴィム・ヴェンダース×役所広司

本作は、ヴィム・ヴェンダースが、日本の公共トイレのなかに“small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)”を見出し、清掃員・平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡ぎ、「第76回カンヌ国際映画祭」で最優秀男優賞を受賞したことを皮切りに、「第50回テルライド映画祭」「第48回トロント国際映画祭」「第71回サンセバスチャン映画祭」「第60回台北金馬映画祭」と名だたる映画祭に招待され、「第36回東京国際映画祭」では、オープニング作品として大きな話題に。また、米国アカデミー賞国際長編映画賞・日本代表に選出された本作は、見事ショートリストに選出。「第96回アカデミー賞」へのコマをひとつ進め、本選ノミネート、そして受賞への期待が高まりる。

「人生は誰も、何も説明的でもないし、伏線もない。何が起こるかわかんない」

東京渋谷の公衆トイレの清掃員・平山は、押上の古いアパートで一人らしている。その日々はきわめて規則正しく、同じことの繰り返しのなかに身を置いているように見えた。ルーティンは孤独を遠ざけるものかもしれない。けれど男のそれはどこか違ってみえた—。映像では、役所広司が、平山について、そして絶賛された演技について率直に語った。

「映画ってやっぱ自由な発想ですべきだなと思いますね」そう、リラックスした表情で語る役所は、映画に対して同じ展開ではなく、また同じ絵でもない「見たことがないものがみたい」と明かす。『PERFECT DAYS』はヴェンダースのこだわりが詰まった、フィクションでありながらドキュメンタリーのような作品で、役所にとっては今まで経験した作品とは異なる「同じ展開ではない」体験になったに違いない。

また、役所が演じた主人公の平山は、前半ほとんどセリフがなく、朝起きて、身支度をし、仕事であるトイレへ清掃に向かう。そんなルーティンが淡々と描かれ、ナレーションもない。そんな展開に役所は、「人生は誰も、何も説明的でもないし、伏線もない。何が起こるかわかんない」というところに惹きつけられるという。わかりやすい起承転結がない映画について「こういう映画は50年後、100年後に見られても、古くならない映画を目指してるんじゃないかなと思う」と語り、小津映画を例に出し、「何が面白いんだろうと思っていた」と明かすも、「自分が年取ってきたり、家族ができたりなんかそういうことによってなんか全然やっぱり深みがある映画だってことに初めてこう気がつくしもっと年取るともっと面白くなるかもしれない。やっぱできればそういう映画に出たいですよね」と本作もそうあってほしいとの願いを込めて語った。

「自分と平山は似ていない」「演じるその人の気分を背負ってないと仕事ができない」「平山さん、どうするんだろうなとかっていうのはふっと考える」と、監督の“Who is Hirayama”というメモ(平山がなぜ今の生活に至ったか、その精神のプロセスが書かれている)を手がかりに、平山を演じきった役所。「あれだけこう同じ繰り返しを見せられても、やっぱりそこにはこう生きた人間がね、人間とか生きた植物が動いている映画っていうのは結構持つんだなって」そう語る横顔が、一瞬平山に重なってみえる、そんなインタビューとなった。

『PERFECT DAYS』は絶賛公開中

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