書と絵が融合「文画」/曽我さん(西目屋出身)考案、創作/偉人の肖像、酒ラベルも

太宰治「津軽」。小説の一部を引用し、太宰の肖像を描いている(曽我さん提供)
曽我さんがデザインした三浦酒造の「純米大吟醸 豊盃『米米』ラベル」。細かい「米」の文字で「豊盃」の字を浮かび上がらせた(三浦酒造提供)

 青森県西目屋村出身の書家・デザイナー曽我篤さん(53)=旧姓佐藤、東京都在住=は、手書きの文字で絵を描くオリジナルの作品「文画(ぶんが)」を考案した。文画は曽我さんの造語で、2020年、試行錯誤の末に表現方法を確立させた。作品は展覧会で入賞しているほか、新酒のラベルに採用されるなど、活躍の場は広がっている。

 「文画は、書であり、かつ絵でもある。字、絵が上手な人はたくさんいるけれど、同時に表現する人はいなかったので、自分で研究しました」(曽我さん)

 作品は、日本語だけでなく外国語でも制作。文字の大きさや線の太さで変化をつけることで、まるで絵が浮かび上がってくるように見える。これまで創作したのは、太宰治の「津軽」、ベートーベンの交響曲第9番「歓喜の歌」をはじめ40点ほど。世界の文豪、偉人らをモチーフに、小説や文章を引用して肖像を描いたものが多い。

 原爆ドームを漢詩で表した「原爆行」など、近年は國際書道連盟展で入賞が続く。文画は商品にも採用され、今年は三浦酒造(弘前市)の依頼を受けて日本酒「豊盃」の新酒ラベルをデザインした。

 1作品の完成にはおよそ1カ月を要する。設計図作りは重要な工程だ。鉛筆で下絵を描いた後、1行に単語をいくつ収めるか、文字を絵にどう載せるかを計算して、緻密な下書きを作る。「理論値と実際がなかなか合わないことがあるので難しい」と曽我さん。ペンを使った本番では、集中力を高めて、一文字一文字を丁寧に紡ぐ。

 曽我さんは元々、システム開発や文字認識の技術開発に携わるエンジニアとして働いていた。12年、西洋の文字を美しく書く「カリグラフィー」のペンを購入したことをきっかけに独学を開始。16年に西洋書家・西村弥生氏に師事しつつ、梵字(ぼんじ)やチベット文字にも取り組んだ。20年には米国の書家マイケル・サル氏から、米国生まれの書体「スペンサリアン」の特別講義を受け、より幅が広がったという。

 やがてコロナ禍で外出がままならなくなり、作風とじっくり向き合う時間ができた。文字と絵を融合させた表現に興味があった曽我さんは、これまで学んだカリグラフィーを基礎として文画の手法を確立。以降、自らを「文画師」と名乗り、精力的に創作を続けてきた。

 今後の目標として、トルストイ「戦争と平和」のように、メッセージ性が高い作品に取り組んでいきたいと意欲的だ。曽我さんは「まだ他の可能性や表現の仕方があるのではないか、との思いがある。新たな表現方法を探していきたい」と語った。

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