初競り向け大間マグロは漁獲可能 漁獲無報告問題 国の枠返還手続きに時間

 大間漁協(青森県大間町)などに所属する漁業者22人が2021年度のクロマグロ漁獲量のうち計92.2トンを県に報告していなかった問題で、漁獲枠から超過量を差し引く国の手続きに一定の時間を要するため、24年の初競り(東京・豊洲市場)に出荷するマグロ漁は通常通り行える可能性が高いことが26日、水産庁への取材で分かった。大間町内の漁業者からは、この年末年始に初競り用のマグロ漁に出られなくなるなどの影響を心配する声が上がっていた。

 水産庁によると、各都道府県枠から超過量を差し引く場合、国が各都道府県の超過が発覚した年度の漁獲実績を再計算し、国がまとめた対応案を水産政策審議会に諮問、答申を受けた後、知事に差し引く内容を照会した上で行われる。手続きには時間を要するとみられる。

 水産庁は青森県の違反数量が計92.2トンだったとする再調査結果の説明を25日に県から受けたといい、同庁担当者は、年明けの初競りまでに超過分を差し引くことは「難しい」との認識を改めて示した。差し引く時期の見通しについても「はっきりとしたことは言えない」と述べた。

 大間漁協の小鷹勝敏組合長は26日、東奥日報の取材に「この年末に枠返還を求められ、初競りに向けて漁獲枠を残している漁師が出荷できなくなることを一番心配していた。来年度の枠が減ることは覚悟している。漁協としてしっかり対応していきたい」と述べた。

 県から漁協に配分された漁獲枠を返還に充てる可能性があることについて、大間町のある漁業男性は「(報告義務を)違反した漁師のせいで、配分された枠の中で真面目にルールを守って頑張っている漁師がばかを見る」と訴える。元々マグロの水揚げ実績が少ない漁師は漁協からの枠の配分が少なく、返還の影響は大きい。「国際的に影響することなので、行政処分だけでなくもっと厳しい法改正などを検討してほしい」と注文した。

 同町内のほかの漁業関係者からは「来年度の配分は減るだろう。漁師の生活はさらに厳しくなる」「(実感としてマグロの資源量が)増加しているのに、現行の漁獲可能量のままなら何もできない」との声も上がった。

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